講演情報

[CS-02]回復の羅針盤 『両手の行為』

*國友 晃1 (1. 愛宕病院)
突然ではあるが,自身の両手の行為について少し目を閉じて想像してほしい.いくつ思い浮かぶであろうか.おそらく少しの時間では全てを表出できないほど,私たちの生活には両手の行為が溢れている.筆者が今まさにパソコンのキーボードをタイピングして執筆する行為も両手である.さらにこの文面に目を通す読者も一連の過程で両手が関わっているはずだ.つまり,両手の行為は人間にとって身近で重要な要素である.この私たちにとって当たり前に存在する両手の行為は,さまざまな疾患により片手単独または片手が優位となる行為へと一変することは少なくない.リハビリテーション専門家は,この生活に馴染み深い両手の行為の回復も目標の一つとなる.
 認知神経リハビリテーションは手の研究から誕生し,片手の研究や手の持つ情報のメカニズムに焦点が当てられてきた.その後,行為間比較というアプローチの研究が始まり,人間の行為について深めることが可能となってきた.そこで人間の行為は,大部分のケースが両手行為であるという事実に気づかされることになる.認知神経リハビリテーションでは,両手行為を,それぞれの手の組織化を個々に捉えたものの「総和」とすることは不適切であると考え,このテーマについて新たな解釈と新たな取り組みを目指している.
 今回,本セクションでは2020年にサントルソ認知神経リハビリテーションセンター(イタリア)が写真家とリハビリテーション専門家がタッグを組み写真集として出版されたESSERE DUEE-Per un approccio neurocognitivo al recupero dell’agire bimanuale-(二つであること-両手動作の回復に対する認知神経的アプローチのために-)で紹介された内容を解説する.本セクションが臨床現場での両手の行為の回復に繋がる一助になれば幸いである.