講演情報

[S1-06]後方への不安定性が残存した橋梗塞症例に対する介入の試み
− 単軸不安定板の特性と下腿の筋活動に着目して −

*伊藤 拓海1、赤口 諒1、奥埜 博之1 (1. 摂南総合病院リハビリテーション科)
【はじめに】
立位保持中は支持基底面に質量中心(COM)を収めるために足圧中心(COP)を制御する。今回、橋梗塞症例の姿勢制御の改善のために、単軸不安定板の道具の特性に着目した介入経過を報告する。

【症例紹介】
症例は左橋梗塞の32日後に右橋梗塞を発症した90歳代の男性である。SARAは初期の19.5点から15点となり、右優位の失調や体幹機能は徐々に改善したが、初期からの立位の重心前方偏移や後方への不安定性は残存していた。36病日に床反力計(テック技販社製)と深度データ計測(Microsoft社製)、筋電計(Plux社製)を用いて、静止立位と前後随意動揺を計測した。COMと前脛骨筋(TA)・ヒラメ筋(Sol)の協調性の指標として、相互相関係数とTime lag(TL)を算出した。

【介入経過】
静止立位では重心が左前方に偏移し、重心移動時には左優位のSolの過剰出力とTAの収縮の乏しさを認めた。単軸不安定板での評価では、軸の位置を変更し、足部の水平保持の特徴を観察した。軸の位置が前足部の際は水平保持が良好だが、後足部の際は軸の位置の認識が難しく、左下肢では足底全体で押し付ける様子が観察された。そこで41病日に、座位で足底の単軸不安定板の水平保持を求める20分間の介入を2度行った。軸が前/中/後足部に位置するように板を移動させ、それに対するCOPの変化へと注意を向けるように教示した。介入後、BBSが44点から46点となり、動作時の後方への不安定性が軽減した。随意動揺ではTAの相互相関係数(右/左)が-0.1/-0.37から-0.77/-0.82、左SolのTLが-108msecから0msecとなった。

【考察】
2度の発症を経て右優位の失調を有し、後方へのふらつきを繰り返したことで、過剰な筋出力を伴う左前足部への荷重戦略を学習していた。失調症状が軽減したにも関わらずその荷重戦略が残存し、柔軟にCOPを制御できないことが問題点と考え、単軸不安定板の軸の位置を考慮した介入を実施した。軸の位置に応じてCOPの制御と情報化を要求されたことで、TA・Solが適切に働いたことが姿勢制御の改善につながったと考えた。単軸不安定板の特性を用いた評価と介入が、姿勢制御時の下腿筋活動の協調性を獲得するための一助となる可能性がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に関して書面にて説明を行い、同意を得た。

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