講演情報

[S2-01]感覚障害によりスプーン把持に過剰出力を呈した症例への介入

*藤澤 慎哉1、沖田 かおる1、松村 智宏1,2 (1. 愛宕病院 リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
症例は陳旧性脳梗塞により右上肢と手指の運動及び感覚障害を呈していた.その為スプーン操作は過剰出力となり食事は全介助で摂取していた.手指の識別や触圧覚の認識課題と認識に基づいた手指操作練習を実施し食事動作が自立した経過を報告する.

【症例紹介】
症例は誤嚥性肺炎で当院入院となり約1年前に脳梗塞を呈していた80歳台男性である.初期評価は右BRS上肢Ⅳ,手指Ⅴ.表在感覚は重度鈍麻,深部感覚は軽度鈍麻であった.FMAの上肢項目は43/66で共同運動や分離運動で減点を認めた.把持力計測装置(テック技販社製)では感覚に基づいた力量調節が困難で過剰出力となり感覚性運動失調を認めた. ACE-Rは32/100点で視力低下から視空間の項目は実施困難であった.実際のスプーン把持は過剰出力により把持形態の崩れに対する気づきが無く,食物がすくえず食事は全介助であった.

【病態解釈】
本症例は左前頭葉・頭頂葉・右後頭葉の陳旧性脳梗塞により運動麻痺や感覚障害を認めた.感覚フィードバックによる力量調節が困難でスプーン操作時に過剰出力であった.その為スプーン把持形態の認識が困難で握り込んで把持するため操作性が低下していた.

【認知運動課題と結果】
手指の触圧覚の認識が可能になる事で食事動作の自立を目標に介入した.手指に対する課題としてスポンジの硬度識別,母指と対立位にある他指の識別やスティックの長さの認識を促した.硬度識別ではスポンジを使用し力量調節をしながら摘まむ課題や健側と患側に異なる硬さのスポンジを把持し識別を促した.手指の力量調節が可能になった上で実際のスプーン使用し食事動作練習を行った.結果,表在感覚は中等度鈍麻となりFMAの上肢項目は58/66で肩の屈曲共同運動が可能となった.注意の持続が可能となった事で ACE-Rに50/100点と改善した. 把持力計測装置では感覚に基づいた力量調節が可能となった.食事動作はスプーンの把持形態の崩れが無くなり自立となった.

【考察】
手指の識別や触圧覚の認識課題と認識に基づいた手指操作練習を実施した結果,手指に注意が向き感覚フィードバックの認識が可能となった.これによりスプーン把持時の力量調節が可能となり,過剰出力が低減した事で食事動作の自立に繋がったと考えられる.

【倫理的配慮】
症例に撮影と発表の説明を行い同意を得た。個人情報の匿名性にも留意した.

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