講演情報
[S2-05]脳出血により重度感覚障害を有する患者の体幹の対称性に着目した介入の有効性
*吉田 将臣1、濵田 裕幸2、後藤 圭介3 (1. 一般社団法人 巨樹の会 松戸リハビリテーション病院、2. 東京大学 大学院新領域創成科学研究科、3. 国際医療福祉大学 成田保健医療学部)
【はじめに】
脳出血による右片麻痺の患者に対して下肢遠位部を中心に訓練を行ったが麻痺側下肢の重度感覚障害の為,下肢に対する認知課題の回答が得られにくく,行為の学習が困難であった.感覚情報の処理が可能であった体幹の対称性に着目し,認知課題を行い歩行の改善が得られたため報告する.
【症例紹介】
症例は60歳台男性,左被殻出血を発症しリハビリ目的で当院に入院された.発症12週後のBr.stageⅡ-Ⅱ-Ⅲ,表在覚・深部覚共に重度鈍麻,SIAS29点,FBS23点,失語症・失行症などの高次脳機能障害は認めなかった.歩行は4点杖を使用し軽介助レベル,TUGは1分19秒であった.歩行の外部観察として歩行周期全体的に身体の剛性を高め,麻痺側遊脚期に骨盤を挙上して振り出し,麻痺側立脚初期には足部内反と股関節内転位での接地がみられていた.内省として「右膝から下が感じないし空中に浮いてる感じがする.バランスをとるので精一杯」と訴えていた.
【病態解釈】
麻痺側足底の接触・圧情報および麻痺側膝より遠位部の空間情報の認識が著しく損なわれており,動作中に姿勢制御への注意と視覚情報に過剰に依存した運動戦略となっている可能性が高かった.このため,身体の剛性が高まり,麻痺側下肢に異常な伸張反射の亢進が誘発され,結果的に歩行の変質に影響を与えていると考えられた.ただし,ポジティブな側面として体幹の感覚情報処理が比較的保たれていたため,これを治療の手がかりとした.
【治療アプローチおよび経過】
歩行における体幹の対称性に着目し,骨盤の左右の高さの識別課題や左右に傾くボードを用いて座位で骨盤の傾斜の識別課題を行い,現在の歩行でのエラーとの比較をしつつ歩容の改善を図った.結果として,麻痺側下肢の感覚障害は残存したがTUGは37秒,FBSは41点に改善した.内省として「歩く時に左足が楽になった」「身体全体でバランスが取れるようになった」との内省が聞かれた.
【考察】
体幹の対称性を強調した訓練が,感覚障害を補完し,運動の調整に寄与したと考えられる.本症例の結果は,感覚障害が著しい場合でも,残存する感覚機能を効果的に利用することで歩行が改善する可能性を示唆している.
【説明と同意】
症例には口頭及び書面にて説明し,同意を得た.
脳出血による右片麻痺の患者に対して下肢遠位部を中心に訓練を行ったが麻痺側下肢の重度感覚障害の為,下肢に対する認知課題の回答が得られにくく,行為の学習が困難であった.感覚情報の処理が可能であった体幹の対称性に着目し,認知課題を行い歩行の改善が得られたため報告する.
【症例紹介】
症例は60歳台男性,左被殻出血を発症しリハビリ目的で当院に入院された.発症12週後のBr.stageⅡ-Ⅱ-Ⅲ,表在覚・深部覚共に重度鈍麻,SIAS29点,FBS23点,失語症・失行症などの高次脳機能障害は認めなかった.歩行は4点杖を使用し軽介助レベル,TUGは1分19秒であった.歩行の外部観察として歩行周期全体的に身体の剛性を高め,麻痺側遊脚期に骨盤を挙上して振り出し,麻痺側立脚初期には足部内反と股関節内転位での接地がみられていた.内省として「右膝から下が感じないし空中に浮いてる感じがする.バランスをとるので精一杯」と訴えていた.
【病態解釈】
麻痺側足底の接触・圧情報および麻痺側膝より遠位部の空間情報の認識が著しく損なわれており,動作中に姿勢制御への注意と視覚情報に過剰に依存した運動戦略となっている可能性が高かった.このため,身体の剛性が高まり,麻痺側下肢に異常な伸張反射の亢進が誘発され,結果的に歩行の変質に影響を与えていると考えられた.ただし,ポジティブな側面として体幹の感覚情報処理が比較的保たれていたため,これを治療の手がかりとした.
【治療アプローチおよび経過】
歩行における体幹の対称性に着目し,骨盤の左右の高さの識別課題や左右に傾くボードを用いて座位で骨盤の傾斜の識別課題を行い,現在の歩行でのエラーとの比較をしつつ歩容の改善を図った.結果として,麻痺側下肢の感覚障害は残存したがTUGは37秒,FBSは41点に改善した.内省として「歩く時に左足が楽になった」「身体全体でバランスが取れるようになった」との内省が聞かれた.
【考察】
体幹の対称性を強調した訓練が,感覚障害を補完し,運動の調整に寄与したと考えられる.本症例の結果は,感覚障害が著しい場合でも,残存する感覚機能を効果的に利用することで歩行が改善する可能性を示唆している.
【説明と同意】
症例には口頭及び書面にて説明し,同意を得た.
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