講演情報

[S2-06]Pusher症候群が軽減し端坐位保持が可能となった半側空間無視と重度感覚障害を呈した症例

*松村 智宏1,2、沖田 かおる1、南場 みずき1 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
脳梗塞により左半側空間無視と重度感覚障害を呈し左側へのpusher症候群が生じ,端座位保持が困難な症例に対して頚部と体幹の認識運動課題を実施した.結果,端坐位保持が可能となった経過を報告する.

【症例紹介】
症例は脳梗塞(右中大脳動脈起始部)を発症し1ヵ月が経過した80歳台女性である.左側の身体機能面は,BRS:上肢と手指Ⅱ・下肢Ⅲ,感覚は上下肢の表在・深部覚共に軽度~中等度鈍麻,体幹は重度鈍麻で,神経心理学的所見はMMSE:6/30点,線分末梢試験:4/36点,線分二等分試験:0/9点であった.前方の提示物や閉眼下での体幹の正中位の認識が困難な事からSVVとSPVの偏位を認めた.端座位はSCP:6点で,頚部が右回旋位で左側へのpusher症候群により保持困難となり内省は聴取困難であった.閉眼下ではpusher症候群の軽減を認めた.

【病態解釈】
症例は左半側空間無視による頸部の右回旋位によってSVVが偏位している.さらに左側の体性感覚障害によりSPVが偏位している.これ等によりpusher症候群が生じ,端座位保持が困難になっていると解釈した.

【課題内容と結果】 
SVVの偏位の軽減を目的に頚部の位置に対する認識運動課題を実施した.左側体幹(肩甲帯・骨盤)には接触課題と体幹の傾きの認識運動課題を実施しSPVの偏位の軽減を図った.課題開始5ヶ月では,BRS:左上肢と手指Ⅲ・下肢Ⅳ,感覚は左側体幹の表在・深部覚共に軽度~中等度鈍麻で,MMSEは7点,線分末梢試験は17点,線分二等分試験:3点となった.SVVは前方の提示物の傾きの認識が可能となり,SPVは閉眼下での体幹の正中位の認識が可能となり偏位が軽減した.端座位はSCP:3.25点となり,頸部の右回旋位が軽減し,左側の傾きに対しては,「左に傾いちゅうね」と内省が聞かれ,pusher症候群が軽減し保持が可能となった.

【考察】
頚部の認識運動課題を実施する事で右回旋位が改善し,左側空間への認識が向上しSVVの偏位が軽減された.左側体幹の認識運動課題により体幹へ注意が向き体性感覚の認識が可能となった.さらに体幹の傾きの認識が可能となった事でSPVの偏位が軽減された.これにより正中位が認識できpusher症候群が改善し端座位保持が可能になったと推察される.

【倫理的配慮】 
発表に対しては同意を得て個人情報の匿名性にも留意した.

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