講演情報

[S2-07]パーキンソン病の強い腰曲がりの改善を目的とした座位姿勢への介入効果
− 食事動作における介助量の軽減を目指して −

*田口 周司1、林 節也2、菅沼 惇一3、近藤 和加奈4、森 武志5 (1. 介護老人保健施設山県グリーンポート デイケアセンター、2. サンビレッジ国際医療福祉専門学校 作業療法学科、3. 中部学院大学看護リハビリテーション学部理学療法学科、4. 美原記念病院 訪問看護ステーショングラーチア、5. 脳血管研究所 美原記念病院 神経難病リハビリテーション課)
【はじめに】
パーキンソン病(PD)の前屈姿勢は,ADLの質を著しく低下させる重要な問題である(岡田, 2015).今回,姿勢異常を呈するPD症例に対し,座位姿勢の改善を目指した介入を行い,食事姿勢の改善および食事動作における介助量の軽減が得られたので報告する.

【症例紹介】
本症例は,数年前PDを発症した60歳代男性.Hoehn&Yahr重症度分類はⅣ,デュオドーパ配合経腸用液100mlを投与.評価では,MDS-UPDRS Ⅲが29/56点,C-FOGQⅡが30/48点,MMSEが26/30点であった.座位では体幹前屈位(屈曲55°程度)が著明で,垂直保持は1分未満であった.閉眼時は体幹前屈における垂直性認識に偏移(15°程度)を認め,前屈姿勢に対して「磁石に引っ張られる感じ」と訴え,腹筋群の筋緊張が亢進(MAS3)していた.食事動作では阻害因子となり,食べこぼしや時間のかかるため,摂食介助であった.

【病態解釈】
PDにおけるCamptocormiaは,腰曲りとも呼ばれる極度の前傾前屈姿勢異常で,重力のかかる座位では前傾が増強し,臥位では真っ直ぐとなり,腹筋群の筋緊張が緩和する特徴を持つ(久永, 2012).本症例では,体幹ジストニアが主要な病態機序と考えられ,腹筋群の筋強剛に伴う知覚運動統合の異常や,姿勢制御に関与する認知機能の異常により,特異的な座位や垂直性認識の偏移が生じていると解釈した.

【治療介入】
本症例に対し,体幹の支持機能の向上及び座位における垂直性の再学習を目的とした介入を実施した.具体的には,①スポンジを使用した肩甲帯への接触課題,②骨盤と体幹の空間的な認識を再学習する課題を行った.介入期間は約3か月で週2回(20分/回)実施した.

【結果】
垂直性認識の是正と座位前屈姿勢の軽減(屈曲15°程度)を認め,垂直保持が3分以上可能となった.また,一時的ではあるが「座っているのが楽になった」と経験が変化し,食事動作も自己摂取量の増加と介助時間の短縮を認めた.

【考察】
PDでは垂直性知覚の調整を目的とした介入は,姿勢知覚やバランス能力が改善する効果が報告されている(Mathevon L, 2016).本症例においても,体幹の垂直性の再学習が座位前屈姿勢の軽減に寄与し,食事動作における介助量の軽減に繋がったと考える.

【倫理的配慮】
本症例には口頭および書面にて説明を行い,同意を得た.

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