講演情報

[S3-02]右痙性麻痺児の運動速度に注意を向ける課題により尖足歩行が足底接地の歩容に変化した症例

*由良 綾香1、木村 正剛1、髙橋 秀和1 (1. 北海道こども発達研究センター)
【はじめに】
脳出血による右痙性麻痺を呈した児童に対し,運動速度に注意を向ける課題を通じて,特異的病理を部分的に制御し,尖足歩行が足底接地の歩容へ変化した一症例を報告する.

【症例】
乳幼児期に脳出血と診断された,右痙性⿇痺を呈した7歳の男児.BRS:右下肢Ⅳ.右膝関節伸展位での⾜関節背屈⾓度は⾃動-5°,他動0°.尖⾜歩⾏により右立脚期に踵が接地せず,体幹が左右に揺れる様子が見られた.右立脚期に右下腿三頭筋の異常な伸張反射,右膝関節伸展時⾜関節底屈の異常な放散反応,右前脛⾻筋の筋出力の動員異常が見られた.また,WISC-ⅤはFSIQ:122,VCI:94.TMTはA:57.6秒、B:114秒.評価訓練では問題ごとに課題以外に注意が逸れ,注意持続の難しさが見られた.身体各部位に対しての注意の分配が難しいこと,特に歩行時の運動速度に対して注意を選択的に向ける難しさが見られた.

【病態解釈】
歩行時に適切な箇所へ注意の分配や持続の難しさがあり,特に運動速度への注意の向け方が不十分であることが,歩行リズムや動作の乱れ,尖足歩行に影響していると考える.また,素早い運動により下腿三頭筋の筋緊張を増加させ,異常な伸張反射や歩行時の右膝伸展位で足関節底屈の異常な放散反応が出現し,足底接地歩容が難しいのではないかと考える.

【治療介⼊】
4週間12回の介⼊で①⻑座位で,⾜関節背屈の他動運動後,⾜関節背屈⾃動運動を実施.運動速度に注意を向けて特異的病理を部分制御するため,左右の⾜関節背屈速度を比較する課題を実施.②両側を揃えた位置〜ステップ肢位で,右踵部に薄い板を入れて空間課題を第2〜3段階で実施.本児には対称的な姿勢保持と運動速度に注意を向けることを求めた.

【結果・考察】
介入後,右膝関節伸展位での⾜関節背屈⾓度は⾃動0°,他動5°,BRS :右下肢Ⅴと変化.また,本児は「ゆっくり動かせば,踵がつけられる」と記述.運動速度に注意を向けることで,特異的病理の影響が軽減し,屋内10m程度の⾜底接地歩行が可能になったと考える.また,注意機能の向上やゆっくりとした運動はフィードバックを得やすく,歩容変化に影響を与えたと考える.今後,学校や屋外での歩⾏も含めた継続的なリハビリテーションが必要であると考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し,所属法⼈の承認を得て,プライバシーの保護について説明し同意を得た.

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