講演情報

[S3-03]歩容の汎化が見られ始めた形式的操作期の痙直型脳性麻痺児に対する介入

*紙野 愛嗣1、高橋 昭彦1 (1. NPO法人子どもの発達・学習を支援するリハビリテーション研究所)
【はじめに】
痙直型脳性麻痺児に対し,9年に及ぶ介入を行ってきた.歩容の改善は認められたが,その効果は訓練室に限定されたものであった.本児の成長に応じて,リアルタイムな身体や空間を問う課題を中心とした介入から,イメージの想起やその活用を中心とする課題へと移行することで,介入効果が訓練室以外の場面にも及び,歩容への汎化が見られ始めたため報告する.

【症例紹介】
12歳男児,普通小学校普通学級に在籍する6年生.独歩未獲得であった3歳7ヶ月から事業所利用を開始した.現在のGMFCSではレベルⅢ.屋外は,両側ロフストランド杖にて移動.日常的には尖足鋏脚歩行である.友達から「ガチャガチャうるさい」と文句を言われたことで,装具の使用をセラピストに相談する場面も増え,他者視点から自分の歩行を内省する様子が見られ始めた.

【病態解釈と介入】
幼児期では,特に体性感覚情報に注意を向けることが困難であった.このため介入は,体性感覚に対する情報処理を中心に行った.小学校3年頃からは,各関節の位置関係などの空間課題や空間と足底圧の関係など同種・異種感覚情報を統合する課題へと移行していった.小学校高学年からは,歩行時の足底圧変化を,足型のイラストに線描画するなど抽象的な情報を可視化させる課題や,他者視点から自分の歩容をイメージし言語化を求める課題へと進めていった.

【結果と考察】
小学校高学年からは訓練室外においても,体幹動揺の減少,歩幅の拡大,歩隔の減少などを認め,歩行の安定性が向上し,訓練室に限定されていた介入効果が日常的な場面にも汎化していった.Piagetは,12歳頃に具体的操作期から形式的操作期に移行すると述べている.形式的操作期とは,抽象的な思考が可能なことと,他者視点を含め自己を客観的に分析できることを特徴とする.この頃から歩行に対して「踵からはじまる」「装具はもう作らんでいいかな」などの記述が得られるようになった.形式的操作期を迎え,歩行中の足底圧変化をイメージするなど抽象的な概念の形成,他者視点からの歩行の分析が行えるように変化したことが,歩容の汎化に影響したと推測された.

【倫理的配慮】
本報告に際し,本人,保護者の同意を得ている.

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