講演情報

[S4-02]慢性疼痛患者のQOLが向上するまでの歩み
− 多角的な介入による身体の再学習 −

*小林 夏渚華1、山﨑 真維1、田島 健太朗1,2、羽方 裕二郎1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
足底部の灼熱感や左下肢痛が続き,長距離歩行が困難であった腰部脊椎管狭窄症(LCS)患者を担当した.身体の捉え方を機能面と教育面に着目して介入し,活動性とQOLが向上したため報告する.

【症例紹介】
症例は2年前にLCSに対して手術を行うも慢性的な下肢痛が残存し,週2回の外来リハビリをしていた70歳台男性である.介入当初は足底部痛があり,安静時でもNRS 5,灼熱感は20m程度歩行すると出現した.6分間歩行テストは総歩行距離150m,休息3回と運動持久力がなかった.また,安静時の立位姿勢も右側荷重優位であり「左に体重を乗せると痛い感じがする」と訴えた.加えて,心因的側面ではPain Catastrophizing Scale(PCS)32点,Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK)41点と破局的思考や運動恐怖感も訴えた. 希望は「犬と散歩に行きたい」であった.

【病態解釈と治療課題】
症例は数年間の左下肢痛により「左に体重を乗せると痛い」と認識し,右側荷重優位の立位姿勢であった.しかし他動的に左側への荷重を促し,視覚的・体性感覚的フィードバックを与えながら重心位置の正中位化を行うと疼痛は軽減した.このことから「左に乗せると痛い」という先入観により不活動を起こし運動恐怖に繋がるという負のループが発生したと考えた.治療課題は右側荷重優位の立位姿勢を改善するためにスポンジの硬度に準じた荷重制御を行い,それらとともに心因的側面にはPain Neuro Science Education(PNE)や自主運動・栄養指導を実施した.

【結果】
治療開始8Wに足底部痛と灼熱感は安静時でNRS 0,荷重時でNRS 3と改善し,6分間歩行テストでは休息なしで総歩行距離201mとなった.アライメント変化では右側荷重優位から両側荷重となり,前後左右での姿勢制御が可能となった.痛みの評価でもPCS 15点TSK 34点に改善し,「歩き始める時に怖いと思うことがなくなった」と犬の散歩や旅行も可能となった.

【考察】
機能面と教育面から多角的に身体の捉え方を再学習したことで,右側への過荷重を足底部の荷重感覚から制御可能となり,アライメントが修正された.これにより活動性とQOLが向上したと考えた.

【倫理的配慮】
発表に際して紙面にて説明し,同意を得た.また,個人情報の匿名性に配慮した.

閲覧にはパスワードが必要です

パスワードは参加登録した方へメール配布しております。