講演情報

[S4-04]左大腿骨頸部骨折後に『右足の力を抜いて歩く』ことができるようになった右片麻痺症例

*田島 健太朗1,2、川口 裕聖2、小林 夏渚華2、羽方 裕二郎2、沖田 学1,2 (1. 医療法人新松田会 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門、2. 医療法人新松田会 愛宕病院 リハビリテーション部)
【はじめに】
左大腿骨頸部骨折後,歩行時に麻痺側の筋緊張が過剰に亢進した右片麻痺症例が「右足の力を抜いて歩ける」ように歩行が改善した経過を報告する.

【症例紹介】
症例は当院で外来リハビリを施行していた右片麻痺の60歳台男性である.転倒され左大腿骨頸部骨折を受傷し人工骨頭置換術施行,術後1週より立位歩行練習を開始した.歩行は骨折前に比較し左立脚期の重心移動が拙劣,麻痺側の筋緊張が亢進し努力様の振り出しを認めた. 術後2週で10m歩行は杖とgait solution使用し40.47秒(51歩)であった.
骨折側での支持を基に受傷前に実施していた麻痺側下肢の空間課題を実施すると筋緊張や運動を制御することは難しく他動運動による認識や言語的誘導,術前のイメージ等を使用しても修正することは困難であった.麻痺側下肢を制御する際に左股関節での支持が弱く体幹左側屈し代償していた.評価的課題として骨盤でのスポンジ硬度識別を実施した.骨折側の骨盤をスポンジで押すと保持することができず硬度の識別は困難であった.その際,麻痺側の筋緊張が亢進し姿勢制御を代償する様子が見られた.スポンジの圧覚から重心移動の距離や左下肢の力量感覚を予測すると姿勢保持が一時的に可能となった.

【病態解釈と結果】
左股関節周囲からの情報に基づいた姿勢制御能力が低下し,麻痺側下肢で代償した結果,放散反応が出現し歩行時に努力様の振り出しが生じていると解釈した.課題は骨盤周囲でスポンジ硬度識別を実施した.術後4週で課題時に姿勢保持と硬さの認識が可能となり,右下肢の筋緊張も軽減していた.左下肢への重心移動や力量感覚は認識できる様になったが,右下肢の筋緊張が軽減したことは認識していなかった.しかし歩行時には「右足の力を抜いて歩ける」と内省が変化し麻痺側下肢の努力様の振り出しは軽減した.10m歩行は杖とA F O使用し28.78秒(39歩),左立脚期の重心移動も円滑となった.

【考察】
今回,骨折側での姿勢制御課題を実施していく中で麻痺側下肢の筋緊張の軽減を認めた.骨折側での姿勢制御能力の向上により右下肢での代償的な姿勢制御が改善されたことで放散反応が軽減し右下肢の運動を制御しやすくなり「右足の力を抜いて歩ける」ように歩行が改善したと考えた.

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者に発表に関して説明し同意を得た.また,個人情報保護の観点から匿名性に配慮した.

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