講演情報

[S5-04]失行により体性感覚情報を処理することが困難で手指巧緻性が低下していた症例

*佐藤 誠1、沖田 学1,2、國友 晃1,2 (1. 医療法人新松田会 愛宕病院 リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
今回,脳梗塞による失行症状により筋緊張が亢進し巧緻性が低下していた症例を担当した.視覚と体性感覚のモダリティに着目し課題を実施した結果,筋緊張が低下したことで巧緻性に改善がみられたため報告する.

【症例】
症例は左頭頂葉後部・側頭葉後部に脳梗塞を発症した60歳台の女性である.発症約1ヶ月後の評価は右側FMA上肢項目が65/66であり,STEFは右81点で左84点であった.失行評価のASTは右4/12左2/12で,De Renziの模倣検査は4/72点であった. SPTAや清水 (2009)の模倣検査(以下模倣検査)を実施した結果,特に体性感覚を処理する能力が低下していた.手指に関して非視覚下では弁別ができず同側での動きの再生,対側へ感覚移送しての手指構成等が困難であった.また動作時には過緊張な状態となりビーズつまみでは何度もつまみ損ねが観察された.その際の内省としては「動かしにくい」「指をみながらやっている」であった.

【病態解釈】
症例は今回の脳梗塞により失行を呈し,特に体性感覚を情報変換する処理能力が低下していた.また物品に合わせた手指構成を体性感覚情報として捉えることができないためプレシェービングができず手指をみながらの物品把持となることで手指が過緊張になっていると解釈した.

【治療課題及び結果】
治療課題は最初に肩・肘・手首の関節運動部位の認識と同側・対側の再生を単関節から始め,複関節へ進めていった.また手指の弁別課題を実施し,その後は視覚,体性感覚それぞれの情報変換課題を実施した.課題開始1ヶ月後の評価ではSTEFが左右共に92点に改善した.ASTは右9/12左6/12となりDe Renziは53/72であった.SPTAでは特に慣習的動作と物品使用で改善を認め,模倣検査も改善した.ビーズつまみでは過緊張になることも少なくなり,つまみ損ねは減少した.この際の内省として,「ビーズをみながらやっている」と変化し手指の動きを気にすることなく実施できるようになった.

【考察】
今回,失行を呈した症例に対して視覚と体性感覚のモダリティを用いて情報変換課題を実施した.その結果,失行症状が軽減したことで筋緊張が低下し巧緻性に向上がみられたと考えた.

【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し,紙面にて本人に説明し同意を得た.また個人情報の保護に留意した.

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