講演情報

[S5-06]イメージを視覚化することができないAphantasia症例
− 行為予測を構築するための治療介入 −

*三上 純1,2、壹岐 伸弥2、川口 琢也2 (1. 株式会社フルラフ、2. 医療法人香庸会 川口脳神経外科リハビリクリニック)
【はじめに】
視覚イメージは,エピソード記憶,未来の出来事の予測,視覚作業記憶などの認知過程に貢献し行為の学習に重要な要素であるが,イメージを視覚化することのできないAphantasiaという病態がある.今回,Aphantasia脳卒中患者への介入経過から,イメージを視覚化できない症例の行為予測の構築方略を考察する.

【症例紹介】
50歳代女性.被殻出血と診断され開頭血腫除術施行.X+8ヶ月より当施設通所開始.BRS-t:下肢VI 上肢IV 手指V,Aphantasiaの評価である,Vividness of Visual Imagery Questionnaire (VVIQ)は26/80点,運動イメージ評価であるKinesthetic and Visual Imagery Questionnaire (KVIQ:右/左)では肩屈曲・肘屈曲・母指-指先で視覚イメージ2/2点(不鮮明)と低下を認めた.筋感覚イメージは5/5点(動きを行っているように強い)であった.また,りんごをイメージし描画することは困難であった.タブレットを使用した上肢の空間課題ではエラーを認め,視覚照合での修正は困難であり,過去の行為を想起することは困難であった.

【病態解釈・治療介入】
各評価の結果から視覚イメージの想起が困難で視覚作業記憶による行為予測の構築が困難なため,行為の学習の妨げになると考えた.Aphantasiaでは空間イメージは影響を受けないとの報告から,上肢の空間課題を実施した.また,過去の行為は抽象的概念として記憶されているとの報告から,エラー時は番号での回答を求め,体性感覚情報を元に過去の行為の想起を求めた.

【結果】
各評価に著変はみられなかったが,空間課題時に番号による回答を求めるとエラーの修正が可能となり「7番はライブに行った時のチケットを出す時」「1番は布団を干す時」など体性感覚から過去の行為を想起することが可能となり,改善したい行為として,「左手でフライパンを持ち右手で盛り付けること」と行為を想起することが可能となった.

【考察】
本症例は,過去の記憶を番号で記憶している可能性が考えられ,体性感覚と番号を関連付けることが行為予測の構築に有効であり,Aphantasiaに伴う視覚イメージによる行為予測の想起の困難性が改善したと考えた.

【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に関して,説明し同意を得た.

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