講演情報

[S6-01]股関節骨折患者における立位姿勢の対称性と主観的な荷重感の関連性の検討

*磯江 健太1、赤口 諒1、池田 勇太1、奥埜 博之1 (1. 摂南総合病院リハビリテーション科)
【はじめに】
股関節骨折患者にみられる一側性の機能障害は姿勢制御に影響し,非対称な立位となることが報告されている.足圧中心(COP)を健側に偏倚させ,重心動揺を減少させる代償的な戦略をとる症例を多く経験するが,こうした外部観察上の特徴と本人の主観的経験は必ずしも一致しない.本研究では立位姿勢の対称性に関する客観的指標と主観的な荷重の認識の関連性を明らかにすることを目的とした.

【方法】
対象は股関節骨折患者12名(年齢80.53±5.99)とし,初期評価と2週間後に再評価した.身体機能評価にはBBSを用いた.立位姿勢の評価には重心動揺計(テック技販社製),深度データ計(Microsoft社製)を使用し,30秒間の静止立位時のCOP,COM(身体重心),頭部の平均位置を測定し,COPの左右平均位置,COMと頭部の左右平均位置の差(MH距離)を算出した.立位時の荷重が左右均等である自信の程度を荷重均等感としNRSで評価した.統計分析にはHADを用いて初期と再評価の比較に対応のあるt検定,各項目間の関連性には,スピアマンの順位相関係数を用いて検討した.

【結果】
初期に比べて再評価ではBBS,荷重均等感に有意な改善を認めたが,COP左右平均位置,MH距離には有意差を認めなかった.荷重均等感とCOP左右平均位置の関連性は初期と再評価ともに有意差を認めなかった.荷重均等感とMH距離の関連性は初期(r=-0.53,p=0.17)であったが,再評価では有意な相関関係(r=-0.81,p<0.01)を認めた.荷重均等感の変化率は,MH距離の変化率(r=-0.60,p<0.05)とBBSの変化率(r=0.82, p<0.01)との間に有意な相関関係を示した.

【考察】
経過が浅い股関節骨折患者は立位姿勢時の主観的な荷重の認識が客観的指標と乖離していることが示唆された.経過とともに荷重の認識は足圧情報ではなく,体幹の側屈の大きさを反映するMH距離との関連を示したことから,体幹の代償に関する情報から立位姿勢の荷重を認識していることが推測された.本研究の結果は,股関節骨折患者の荷重の認識に関する特性とバランス機能の改善との関連を示し,荷重の認識を経時的に評価することの重要性が示唆された.

【倫理的配慮(説明と同意)】
発表に関して対象者に説明を行い,書面にて同意を得ている.

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