講演情報

[S6-04]示指他動運動時の脳磁場活動:閉眼と直視条件の比較分析

*内倉 清等1、小出水 和也1、楡田 章人1、渡邉 拓也1、原口 真理士1、根井 麻紀1、八木 和広2、河野 寛一3 (1. 潤和会記念病院 リハビリテーション療法部、2. 潤和会記念病院 臨床検査室、3. 潤和会記念病院 リハビリテーション 科)
【はじめに】
認知神経リハビリテーションの訓練では、閉眼で体性感覚の識別を求めることが多い。近年、様々な条件下での手指運動時の脳活動を脳磁図(MEG)を用いて解析した報告が増えてきている(Piitulainen,2021)。しかし、視覚情報有無での手指運動時の脳活動の違いを調べた研究は少ない。本研究では、MEGを用いて閉眼および直視条件での手指他動運動時の脳磁場活動を計測し、両条件下での脳磁場活動を比較検討したため報告する。

【方法】
対象は神経学的疾患の既往のない右利き健常成人3名(51±16.3歳)とした。 運動課題は閉眼および直視条件での右示指の他動運動(屈曲-伸展運動)とし、2秒に1回程度、3分間実施した。なお、直視条件では運動課題中の右示指を直視することを求めた。右示指のPIP関節とDIP関節の中間に三次元加速度センサーを装着し、示指の運動と脳磁場活動のコヒーレンスを検出した。検出結果はMNE法を用いて解析し、MRI画像に投影した後、各条件下における他動運動時の脳磁場活動を比較検討した。

【結果】
閉眼および直視の両条件において、両側の一次体性感覚野、一次運動野、前頭前野、運動前野、上頭頂連合野、下頭頂連合野、二次体性感覚野、下側頭部、左側の頭頂間溝に脳磁場活動を確認した。その中でも両側(特に右側)の下頭頂連合野の活動は、直視時に強い傾向にあった。さらに直視条件では,両側の側頭連合野(特に上側頭溝周囲)、左側の補足運動野の活動を認めた。

【考察】
本研究において、 直視条件では下頭頂連合野の脳磁場活動が強く確認された。これは下頭頂連合野が視覚と体性感覚の統合を担っていることが考えられる。また直視条件において、両側の上側頭溝周囲の活動が記録された。これは上側頭溝が身体の動きの認識に関与していることが影響していると考えられる(Allison,2000)。これらのことから、直視条件では複数の脳領域が活動するため、より体性感覚に注意を向けるためには閉眼での訓練が望ましいと考えられる。

【展望と課題】
今回の運動課題は単純な手指の他動運動であったが、今後は体性感覚の識別を求める課題等も実施し、認知神経リハビリテーションの訓練に基づいた運動課題中の脳磁場活動の分析も行いたい。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院倫理審査委員会の承認を受け、対象者に書面にて説明をし同意を得た上で実施した。

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