講演情報

[S6-07]力を入れずに動くとの認識から日常生活動作が改善した脳卒中生活期の1症例報告

*粉川 幸子1、郷胡 佑輔1、福田 俊樹1、唐沢 彰太1、鶴埜 益巳1,2 (1. 脳梗塞リハビリセンター、2. 東京有明医療大学)
【目的】
当施設は関連法規を順守して医療・介護保険外で脳卒中生活期患者を中心に,外来でリハビリサービスを提供する.今回,自宅退院後も日常生活動作や腰痛の改善を希望し,その実現が図られた脳梗塞の1症例の後方視的にカルテを観察し経過の特徴を認めたため報告する.

【症例紹介】
症例は80歳代の男性で,X年1月に上記診断からA病院で保存的加療を受け,3月にB病院回復期病棟に転院,7月に自宅退院した.退院時,右片麻痺は残存したが屋内生活は概ね自立,外出には簡易短下肢装具装着,T字杖使用で家族の監視を要した.介護保険での週2回の通所リハビリサービスを利用しつつ,当社の利用となった.

【病態分析】
X+1年5月下旬の初回時,動作全般に患側の同時収縮による運動制御が三人称観察され,関連する患側各関節の運動軸の誤認や重さの表現が一人称観察された.特に歩行時に患側の肘関節を屈曲し体幹に付ける必要性やその視覚的な把握,また足底の接地感は分かるが1歩出すのに漠然と力が必須と話すため,残存する接触情報に基づく視覚との変換を活用し,運動覚情報の病後への更新を企図した内容の評価的訓練を行った.結果,運動軸の修正と動きやすさの表現とともに,上下肢の運動制御に同時収縮の低減を認めたため,本人の希望により週2回の継続的な訓練を開始した.

【経過】
X+1年7月末までの介入で患側上肢の食事,整容,更衣,排泄,入浴動作への参画や,下肢では歩行スピードの向上,体幹では腰痛の消失や起き上がり動作のスピード向上が得られた.また修正が進んだ運動覚情報の内容は言語化が進み,その自覚に基づいて行為の自己管理を可能とした.

【考察】
経過より当社での介入以前は,運動覚情報の病前後のズレに努力的な同時収縮で対応し,また比較的に参照可能な接触情報に基づいて活動の理由付けを行う誤学習が生じたと考える.残存した神経系を活用した病後の運動学習は,Perfettiがいうように当事者だけでは難しく,専門家による様々な視点に基づく教育的アプローチが必要である.今回,病前後で誤差の大きかった運動覚情報の更新により,患側各関節の細分化と運動単位の動員の調整に関する運動学習とそれに基づく行為間比較が進み,日常生活動作の自己管理に改善が図られたと考える.

【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に関する説明を書面にて行い,同意を得た.

閲覧にはパスワードが必要です

パスワードは参加登録した方へメール配布しております。