講演情報

[SaL-06]発達とイミテーション

*信迫 悟志1,2 (1. 畿央大学大学院健康科学研究科、2. 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)
子どもは幼いころから多くの日常生活上の行為スキルを大人や熟達者の行為を観察し模倣(イミテーション)することで身につけていく。一方,意識的に行為をシミュレートすることが運動イメージ(Motor Imagery: MI)である。いくつかの科学的知見によれば,イミテーションはMIの発達に先行し,行為シミュレーションの向上において重要な役割を果たすと考えられている。このイミテーションにもMIにも障害を示す代表的な神経発達障害の一つに発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder: DCD)がある。DCD児ではMI能力の低下,MIではなく視覚イメージを想起している可能性などが示されている。したがって,個人の行為シミュレーション能力を把握し介入していく臨床において,個々のMI能力を精査していくことは重要であると考えられる。一方,対象の知覚・認知は機能しているが,心的イメージの形成が難しい状態のことをアファンタジアと呼ぶ。DCD児では,視覚イメージの想起は可能なもののMIの想起が困難な児がいるが,これはMIのアファンタジアと呼べるのではないかと考えられる。またDCD児におけるMI障害は,環境に対してどのように動くのかに関するシミュレーション能力の障害と捉えられる一方で,環境が提供する行為可能性(アフォーダンス)を認識する能力の障害と捉えることも可能である。このことから個人のアフォーダンスを認識する能力を評価することも,行為のシミュレーション能力を精査し洗練させていく臨床作業においては重要な視点であると考えられる。イミテーション,エンボディードシミュレーション,MI,アファンタジア,アフォーダンスといったキーワードは,DCDだけでなく,他の神経発達障害や脳性麻痺などの運動障害にも関わる。本セッションではこれらのキーワードを基に症例提示を交えた討議を行う予定である。

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