講演情報

[1R0208-08-01]コーチングからみるコミュニケーションの本質

*江草 典政1 (1. 島根大学医学部附属病院)
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認知神経リハビリテーションは、その理論的背景に「内部観察」という視点がある。これは、運動や行為といった最終的な表現の背景にある病態を、認知プロセスの観点から解釈していく手続きを含んでいる。この内部観察では、神経心理学的な視点から問題を特定することに加え、問題の本質に迫るために「患者の一人称」の視点にアプローチする。対話を通して、患者が自身の身体をどのように捉え、運動や行為をどう経験しているのかを、セラピストと可能な限り共有できる形で引き出していくのである。

こうした対話を進める臨床プロセスにおいて、多くの臨床家は2つの障壁を乗り越える必要がある。一つ目は「自分の身体を表現する言葉の乏しい患者から、いかに言葉を紡ぎ出すか」。二つ目は「紡ぎ出された言葉をどのように解釈し、治療に活かすか」である。患者にとって身体の経験が変質することは、過去の経験とは大きく異なる。加えて、患者は身体の部位や機能について、必ずしも医療者のような知識を持っているわけではない。対話の前提となる情報が不足する中で、自身を表現することの難しさは想像に難くない。

本講演では、演者がこれまで取り組んできたコーチングやペインリハビリテーションの知見も参照しながら、「見えない“患者の内観”を観る」ためのコミュニケーションのあり方やその本質について情報を提供し、議論のきっかけとしたいと考える。コミュニケーションとは何か? この問いについて、現地で参加者と考えを深める時間となれば幸いである。