講演情報

[CD-04]姿勢バランスの見えない病態を多角的側面から観る

*菅沼 惇一1 (1. 中部学院大学)
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「姿勢バランスの見えない病態を観る」 という本セッションのテーマが示すように,姿勢制御の障害は外見からは必ずしも捉えられず,臨床現場における大きな課題となっている.転倒や活動制限の背景にあるこれらの「見えない病態」を把握するためには,多角的な評価が求められる.臨床で広く用いられる Berg Balance Scale(BBS) は信頼性の高い評価法であるが,天井効果などの限界も指摘されている.これを補う方法として,姿勢制御を各領域に分けて詳細に把握できる BESTest や,より簡便な Mini-BESTest が活用され,患者ごとのバランス機能の偏りを可視化できる.また,重心動揺計測は静止立位における揺れの大きさや周波数特性を数値化でき,観察だけでは見えない微細な姿勢制御の変化を明らかにする手段となる.

さらに近年は,転倒恐怖感や注意機能といった心理的・認知的要因が姿勢制御に影響することも報告されている.恐怖感に伴う硬直化や注意の焦点化による動揺の変化は,従来の観察だけでは捉えられず,臨床的評価や重心動揺解析と組み合わせて包括的に理解することが求められる.

この「見えないものを観る」という視点は,認知神経リハビリテーションの理念とも通じる.認知神経リハは中枢神経系の可塑性と学習理論を基盤とし,知覚・注意・記憶などを統合的に活性化させることを重視する.セラピストと患者の対話や運動イメージ,知覚課題を通じた「問題解決型の訓練」は,まさに見えない認知過程を可視化し,回復へ導く実践である.

本セッションでは,私から多角的評価の枠組みを提示し,植田氏から恐怖感と注意の影響,細江氏から脳卒中片麻痺症例を通じた実践報告をいただく.そして,姿勢バランスの見えない病態をいかに評価・共有し,臨床介入の質向上へ結びつけていくかを議論したい.