講演情報
[CD-16]失語症者の言語症候と認知過程を再考する
*稲川 良1 (1. 水戸メディカルカレッジ)
ペルフェッティ(2012)は、ルリアの記述科学(romantic science)、バレーラの神経現象学(neurophenomenology)を引用し、認知神経リハビリテーションにおいて「患者と話す」というプロジェクトを提案した。この取り組みでは、対象者の言語記述だけに頼るのではなく、神経生理学的・生物学的側面と現象学的側面の関係を研究していくことの重要性が強調されている。
失語症は神経心理学分野において、その症候と神経基盤の関係が明らかにされてきた。一方で、言語検査では捉えることのできない機能的・語用論的コミュニケーション能力評価の必要性も、長らく訴えられてきた。様々な分析手法の中でも、近年では失語症者の認知過程に焦点を当て、行動的・生理学的指標により客観的に病態を分析しようとする研究が試みられている。例えばCooper(1974)による視覚と言語の関係性への言及を契機として発展した視線計測は、現在では言語理解や産生、その予測にも関わる指標とされるようになった。また、言語症候と自律神経活動の関係を示した研究(Ryals et al., 2021)、言語症状の自覚が失語症の回復に与える影響を見出した研究(Eaton et al., 2011)なども、捉えがたい失語症の病態の解釈に迫る方法として挙げられるだろう。
本セッションでは、はじめに失語症者の評価・分析について概説する。その後、症例の報告を通じて、失語症者の認知過程の変容を確認する。ルリア(1980)によれば、意識の形成における言語の意義は、言語が人間の意識的活動全域に入り込み、心理諸過程を新しい水準に押し上げている点にある。言語が認知の主要な手段になるとすれば、失語症者は周囲の情報を部分的に異なる方法で解釈し、再編成された認知的方略により世界を捉えていると考えられる(Ardila & Rubio-Bruno, 2018)。
当日は、失語症者との臨床のなかの対話から、あるいは現在の分析手法を用いて、どのように失語症者の見えない病態を観ることができるのかを討議する予定である。
失語症は神経心理学分野において、その症候と神経基盤の関係が明らかにされてきた。一方で、言語検査では捉えることのできない機能的・語用論的コミュニケーション能力評価の必要性も、長らく訴えられてきた。様々な分析手法の中でも、近年では失語症者の認知過程に焦点を当て、行動的・生理学的指標により客観的に病態を分析しようとする研究が試みられている。例えばCooper(1974)による視覚と言語の関係性への言及を契機として発展した視線計測は、現在では言語理解や産生、その予測にも関わる指標とされるようになった。また、言語症候と自律神経活動の関係を示した研究(Ryals et al., 2021)、言語症状の自覚が失語症の回復に与える影響を見出した研究(Eaton et al., 2011)なども、捉えがたい失語症の病態の解釈に迫る方法として挙げられるだろう。
本セッションでは、はじめに失語症者の評価・分析について概説する。その後、症例の報告を通じて、失語症者の認知過程の変容を確認する。ルリア(1980)によれば、意識の形成における言語の意義は、言語が人間の意識的活動全域に入り込み、心理諸過程を新しい水準に押し上げている点にある。言語が認知の主要な手段になるとすれば、失語症者は周囲の情報を部分的に異なる方法で解釈し、再編成された認知的方略により世界を捉えていると考えられる(Ardila & Rubio-Bruno, 2018)。
当日は、失語症者との臨床のなかの対話から、あるいは現在の分析手法を用いて、どのように失語症者の見えない病態を観ることができるのかを討議する予定である。
