講演情報
[P1-06]精神科入院中の双極性障害患者に出現したすくみ足と特定条件下での不安の関連
―理学療法経過からみた症例報告―
*石橋 雄介1、福田 浩巳1 (1. 大阪精神医療センター)
【はじめに】すくみ足(freezing of gait:FOG)はパーキンソン病以外の要因でも出現し、精神科入院患者にもみられることがある。本報告では、精神科入院中の双極性障害患者に出現したFOGに対する理学療法を通じて得られた臨床的知見を共有する。
【症例紹介】50代男性。双極性障害の診断で精神科入院中。抗精神病薬、気分安定薬を内服している。X−27年頃より精神症状が出現し通院開始。X−1年10か月頃から歩行困難や全身痛を訴え救急搬送や入院を繰り返し、X−1年2か月に幻聴や希死念慮を契機に当院へ入院した。
【評価・病態解釈】X日に理学療法を開始。当初は「腰と足が痛い」と訴えていたが、経過中にFOGが出現し歩行困難となった。MoCA-J 11点、FAB 6点で認知機能障害を認め、筋力や関節可動域に明らかな異常はなく、疼痛はNRS 0~10と変動し一貫性に乏しかった。FOGは手すりが途切れる場面、方向転換、人とのすれ違いなど、自動化された歩行が妨げられる場面で顕著であり、「廊下は怖い」といった語りや再現性に乏しい疼痛の訴えから、不安や痛みへの誤帰属の影響も推察された。これらに対し外的キューを提示するとFOGは軽減し、TUGは無指示条件で25秒、外的キュー条件で14秒であった。
【介入と経過】外的キューを用いた歩行練習によりTUGは無指示条件でも12秒に短縮され、200mの連続歩行も可能となった。しかし、X+1か月半頃より活気が低下し歩行困難が再燃。X+2か月にはTUGの遂行も困難となった。同時期、腹部大動脈瘤の手術を控え「自分は癌で死ぬ」と訴えるなど、病識の乏しさを背景とした全般的な不安の高まりが観察された。X+2か月半に手術目的で転院。再入院後は活気や意欲は改善したが、廊下など開放的な空間では恐怖心が先行しFOGが持続するなど、環境に応じた限局性の不安が顕著であった。
【考察】本症例のFOGは、注意機能障害を背景とした認知負荷の増大に、特定の行為と環境条件が重なり予期不安を誘発し、行為制御が破綻したと考えられた。外的キューは注意焦点化により認知負荷と不安を軽減し、一時的な改善は得られたが、歩行の再獲得には至らなかった。
【倫理的配慮、説明と同意】本発表にあたり、本人に口頭および書面で説明を行い、同意を得た。
【症例紹介】50代男性。双極性障害の診断で精神科入院中。抗精神病薬、気分安定薬を内服している。X−27年頃より精神症状が出現し通院開始。X−1年10か月頃から歩行困難や全身痛を訴え救急搬送や入院を繰り返し、X−1年2か月に幻聴や希死念慮を契機に当院へ入院した。
【評価・病態解釈】X日に理学療法を開始。当初は「腰と足が痛い」と訴えていたが、経過中にFOGが出現し歩行困難となった。MoCA-J 11点、FAB 6点で認知機能障害を認め、筋力や関節可動域に明らかな異常はなく、疼痛はNRS 0~10と変動し一貫性に乏しかった。FOGは手すりが途切れる場面、方向転換、人とのすれ違いなど、自動化された歩行が妨げられる場面で顕著であり、「廊下は怖い」といった語りや再現性に乏しい疼痛の訴えから、不安や痛みへの誤帰属の影響も推察された。これらに対し外的キューを提示するとFOGは軽減し、TUGは無指示条件で25秒、外的キュー条件で14秒であった。
【介入と経過】外的キューを用いた歩行練習によりTUGは無指示条件でも12秒に短縮され、200mの連続歩行も可能となった。しかし、X+1か月半頃より活気が低下し歩行困難が再燃。X+2か月にはTUGの遂行も困難となった。同時期、腹部大動脈瘤の手術を控え「自分は癌で死ぬ」と訴えるなど、病識の乏しさを背景とした全般的な不安の高まりが観察された。X+2か月半に手術目的で転院。再入院後は活気や意欲は改善したが、廊下など開放的な空間では恐怖心が先行しFOGが持続するなど、環境に応じた限局性の不安が顕著であった。
【考察】本症例のFOGは、注意機能障害を背景とした認知負荷の増大に、特定の行為と環境条件が重なり予期不安を誘発し、行為制御が破綻したと考えられた。外的キューは注意焦点化により認知負荷と不安を軽減し、一時的な改善は得られたが、歩行の再獲得には至らなかった。
【倫理的配慮、説明と同意】本発表にあたり、本人に口頭および書面で説明を行い、同意を得た。
