講演情報
[P2-03]重度運動麻痺症例における随意性改善後の麻痺手の実用性獲得に向けた介入の試み
*高橋 秋乃1、池田 勇太1、佐川 雅俊1、赤口 諒1 (1. 摂南総合病院 リハビリテーション科)
【はじめに】
脳出血後の血腫吸収により、運動の随意性が徐々に改善することは少なくないが、それをADLへ汎化するには更なる介入が必要な場合がある。今回、重度運動麻痺を呈した脳出血症例に対し、随意性の改善後に認知神経リハビリテーションを導入し、麻痺手の実用性が向上した経過を報告する。
【症例】
症例はもやもや病による脳出血を発症した両利きの50代女性である。転院時(22病日)はBRS上肢・手指Ⅰ、右肩関節に亜脱臼を認めた。作業療法では両手動作練習、電気刺激療法、端座位で机上に設置した前腕への荷重により肩甲骨周囲筋の緊張を高める介入を行った。60病日、BRSは上肢・手指Ⅱと僅かに随意性の改善を示し、FIMの運動項目は88点であったが、麻痺手の行為参加は乏しくMotor activity log(MAL)の使用頻度は0.14で「使っていいのかわからない」と訴えていた。症例は服薬動作の改善を希望しており、麻痺手で袋の把持はできたが、大胸筋・上腕屈筋群の過剰収縮に伴う肩甲骨挙上と母指内転筋の放散反応が生じ、把持の継続は困難であった。
【評価と病態解釈】
手指と肩甲帯の知覚は良好であったが、把持動作時は手指に注意が偏り、肩甲骨挙上の自覚はなかった。肩甲骨挙上へ注意喚起し、肩甲骨周囲筋の過剰努力が改善することで手指の随意性が向上した。以上から、手指への過剰な注意と肩甲骨周囲筋の過剰努力が手指機能改善を妨げていると推察し、僧帽筋下部線維の活動による肩甲骨の安定化が重要と考えた。
【介入および結果】
一軸不安定板と2種類の錘を用い、重量に対する僧帽筋下部線維の予測的制御が求められる課題を20分/日、2日間行った。91病日、BRSやFIMに変化はなかったが、肩甲骨の安定性の向上により母指内転筋の放散反応が改善し、麻痺手で袋の把持が可能となった。MALは使用頻度0.28と変化し、他の行為への麻痺手の参加も増加した。
【考察】
重度運動麻痺の患者に対するリハビリテーションでは、随意性の向上に焦点があてられがちであるが、麻痺手使用時に求められる肩甲骨の安定性は、麻痺手の実用性向上に極めて重要である。本報告は、一時的に随意性を損なった麻痺手の回復から実用性の獲得に至るまでのプロセスに認知神経リハビリテーションの視点の有用性を示唆する。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に関して本症例に説明を行い書面にて同意を得た。
脳出血後の血腫吸収により、運動の随意性が徐々に改善することは少なくないが、それをADLへ汎化するには更なる介入が必要な場合がある。今回、重度運動麻痺を呈した脳出血症例に対し、随意性の改善後に認知神経リハビリテーションを導入し、麻痺手の実用性が向上した経過を報告する。
【症例】
症例はもやもや病による脳出血を発症した両利きの50代女性である。転院時(22病日)はBRS上肢・手指Ⅰ、右肩関節に亜脱臼を認めた。作業療法では両手動作練習、電気刺激療法、端座位で机上に設置した前腕への荷重により肩甲骨周囲筋の緊張を高める介入を行った。60病日、BRSは上肢・手指Ⅱと僅かに随意性の改善を示し、FIMの運動項目は88点であったが、麻痺手の行為参加は乏しくMotor activity log(MAL)の使用頻度は0.14で「使っていいのかわからない」と訴えていた。症例は服薬動作の改善を希望しており、麻痺手で袋の把持はできたが、大胸筋・上腕屈筋群の過剰収縮に伴う肩甲骨挙上と母指内転筋の放散反応が生じ、把持の継続は困難であった。
【評価と病態解釈】
手指と肩甲帯の知覚は良好であったが、把持動作時は手指に注意が偏り、肩甲骨挙上の自覚はなかった。肩甲骨挙上へ注意喚起し、肩甲骨周囲筋の過剰努力が改善することで手指の随意性が向上した。以上から、手指への過剰な注意と肩甲骨周囲筋の過剰努力が手指機能改善を妨げていると推察し、僧帽筋下部線維の活動による肩甲骨の安定化が重要と考えた。
【介入および結果】
一軸不安定板と2種類の錘を用い、重量に対する僧帽筋下部線維の予測的制御が求められる課題を20分/日、2日間行った。91病日、BRSやFIMに変化はなかったが、肩甲骨の安定性の向上により母指内転筋の放散反応が改善し、麻痺手で袋の把持が可能となった。MALは使用頻度0.28と変化し、他の行為への麻痺手の参加も増加した。
【考察】
重度運動麻痺の患者に対するリハビリテーションでは、随意性の向上に焦点があてられがちであるが、麻痺手使用時に求められる肩甲骨の安定性は、麻痺手の実用性向上に極めて重要である。本報告は、一時的に随意性を損なった麻痺手の回復から実用性の獲得に至るまでのプロセスに認知神経リハビリテーションの視点の有用性を示唆する。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に関して本症例に説明を行い書面にて同意を得た。
