講演情報

[P2-05]慢性期脳卒中症例に対しADLの再獲得の一端として異常な放散反応の制御に着目した1症例

*中西 亮太1、上田 将吾1、 高木 泰宏2、山中 真司3、上羽 孝大2、山口 浩貴1、板野 綾佳1、加藤 祐一4 (1. 結ノ歩訪問看護ステーション、2. むすびのあゆみキッズ、3. デイサービスセンター結ノ歩、4. 結ノ歩訪問看護ステーション東山)
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【はじめに】慢性期脳卒中例の異常な放散反応の制御に着目し,一定の改善を得たが,ADLでの使用には至らなかった症例を報告する.

【症例】症例は左被殻出血を発症後,11年経過した60歳代右利き男性とした.Br.stageは右上肢手指Ⅲ,感覚鈍麻を認めた.modified Ashworth scale(MAS)は前腕回外2,回内1+であった.また,失語症,失行症,注意障害を認めた.ADLで麻痺手の使用はなく「洗い物の時に使えたら」と希望した.麻痺手で食器把持を介助するが,手指の伸張反射の異常を認めた.机上に置いた麻痺手の異常な放散反応を制御して行う非麻痺側上肢での物品操作課題は126秒を要した.

【評価的訓練】2~4指MP関節の伸展距離を識別する課題にて,手指屈筋の伸張反射の異常へ注意が向き,運動覚での識別が困難であった.前腕回内外距離を識別する課題にて,前腕の回外方向では腕橈骨筋の伸張反射と手指に異常な放散反応を認め,識別困難であった.回内方向では,腕橈骨筋の伸張反射の異常は僅かで,手指の異常な放散反応も制御され運動距離の識別が可能であった.

【病態解釈と訓練】症例は異常な放散反応が常態化したことで,筋の伸張感を知覚仮説として右上肢の状態を認識していたと考えた.よって,伸張反射の異常が出現しにくい前腕回内外中間位から回内90°の範囲で運動距離の識別課題を行った.回答は30°おきに配置した目盛りの番号で求めた.これにより,伸張反射の異常を制御することで,異常な放散反応の制御が可能になると考えた.この課題を週1回1時間を6回行った.

【経過と結果】課題開始当初は回内60°を超えると病理が出現したため,回内0~60°の範囲で識別を実施した.課題継続に伴い病理が制御されてきたため,90°までの範囲へ拡大した.バリエーションとして速度の変化を加えた.Br.stageや感覚,MASでは改善を認めないにも関わらず,物品操作課題は異常な放散反応は認めず86秒で遂行可能となった.しかしADLでは使用に至らず「力が入ってないと自分の体ではないみたい」と語った.

【考察】課題を通して運動覚で身体の認識が可能となった結果,物品操作時の異常な放散反応が制御可能となったと考える.しかし力の入らない身体を切り離して認識したことで,ADLでは使用に至らなかったと考える.

【倫理的配慮】発表に際し症例に同意を得た.