講演情報
[P4-01]脳梁離断症候群を伴う脳梗塞症例への左右の感覚情報の統合に対する介入の試み
*吉田 将臣1、濵田 裕幸2、川崎 翼3、後藤 圭介4 (1. 一般社団法人 巨樹の会 松戸リハビリテーション病院、2. 東京大学 大学院新領域創成科学研究科、3. 東京国際大学 医療健康学部 理学療法学科、4. 国際医療福祉大学 成田保健医療学部 理学療法学科)
【はじめに】
脳梁離断症候群と深部感覚障害により左右下肢の感覚情報の統合が困難で,運動エラーの自覚に乏しかった症例に対し,左足底圧情報を手がかりに左右の感覚情報の統合を促す介入により,歩行と内省に変化がみられた症例について報告をする.
【症例紹介】
本症例は左前大脳動脈領域の脳梗塞を発症し,発症16日目に当院へ入院した70歳代男性である.発症60日目のBrsは右上下肢Ⅵ-Ⅵ-Ⅵ,表在覚・運動覚は5/5,位置覚は2/5であった.FBS 40点,TUG 17.9秒,MMSE 29点,TMT-A 112秒,TMT-B 482秒であった.脳梁離断症状として左上下肢の観念運動失行と左右上下肢の協調運動障害を認めた.歩行はT字杖使用下で部分介助を要し,右立脚中期に右股関節と膝関節の屈曲,骨盤の右下制がみられた.内省として「右足を引きずる感じがする」と述べたが,歩行動画を観察しても右下肢の支持に関するエラーの自覚は困難であった.両下肢の感覚を同時に比較することは困難であったが,左右いずれかの足底圧の認識は可能であった.
【病態解釈】
位置覚の障害により身体位置の認識が不正確であり,さらに脳梁離断により左右大脳半球間の情報の統合が阻害され,左右間の感覚情報の比較・照合が困難となった結果,歩行のエラーの即時的な認識と修正が困難であったと推察される.ただし,一側の圧情報は認識可能であったことから,左右間の情報の統合が可能となることで動作の改善が促進されると考えた.
【アプローチと結果】
体重計2台を用いた立位課題を8日間(1日約40分)実施した.「左足にかかる体重を軽くしてください」の指示では姿勢保持が可能であったが,「右足に体重をかけてください」では右下肢が屈曲し,左下肢で押し返す動作がみられた.左右の感覚統合を促すため,片足にかかる重量(10kgなど)を指示し,反対側に荷重を促す課題を行い,「左足が軽くなった時,右足に体重がかかる感じがしますか」といった言語的ガイドを行った.結果,FBSは48点,TUGは13.9秒に改善し,「右足に体重をかけると右膝が曲がる」といった右下肢支持に関するエラーの自覚も得られた.
【考察】
左右の情報の統合が困難であっても,残存する感覚情報を介することで左右間の情報統合が促され,歩行や内省の変化に繋がる可能性が示唆された.
【説明と同意】
症例には口頭及び書面にて説明し,同意を得た.
脳梁離断症候群と深部感覚障害により左右下肢の感覚情報の統合が困難で,運動エラーの自覚に乏しかった症例に対し,左足底圧情報を手がかりに左右の感覚情報の統合を促す介入により,歩行と内省に変化がみられた症例について報告をする.
【症例紹介】
本症例は左前大脳動脈領域の脳梗塞を発症し,発症16日目に当院へ入院した70歳代男性である.発症60日目のBrsは右上下肢Ⅵ-Ⅵ-Ⅵ,表在覚・運動覚は5/5,位置覚は2/5であった.FBS 40点,TUG 17.9秒,MMSE 29点,TMT-A 112秒,TMT-B 482秒であった.脳梁離断症状として左上下肢の観念運動失行と左右上下肢の協調運動障害を認めた.歩行はT字杖使用下で部分介助を要し,右立脚中期に右股関節と膝関節の屈曲,骨盤の右下制がみられた.内省として「右足を引きずる感じがする」と述べたが,歩行動画を観察しても右下肢の支持に関するエラーの自覚は困難であった.両下肢の感覚を同時に比較することは困難であったが,左右いずれかの足底圧の認識は可能であった.
【病態解釈】
位置覚の障害により身体位置の認識が不正確であり,さらに脳梁離断により左右大脳半球間の情報の統合が阻害され,左右間の感覚情報の比較・照合が困難となった結果,歩行のエラーの即時的な認識と修正が困難であったと推察される.ただし,一側の圧情報は認識可能であったことから,左右間の情報の統合が可能となることで動作の改善が促進されると考えた.
【アプローチと結果】
体重計2台を用いた立位課題を8日間(1日約40分)実施した.「左足にかかる体重を軽くしてください」の指示では姿勢保持が可能であったが,「右足に体重をかけてください」では右下肢が屈曲し,左下肢で押し返す動作がみられた.左右の感覚統合を促すため,片足にかかる重量(10kgなど)を指示し,反対側に荷重を促す課題を行い,「左足が軽くなった時,右足に体重がかかる感じがしますか」といった言語的ガイドを行った.結果,FBSは48点,TUGは13.9秒に改善し,「右足に体重をかけると右膝が曲がる」といった右下肢支持に関するエラーの自覚も得られた.
【考察】
左右の情報の統合が困難であっても,残存する感覚情報を介することで左右間の情報統合が促され,歩行や内省の変化に繋がる可能性が示唆された.
【説明と同意】
症例には口頭及び書面にて説明し,同意を得た.
