講演情報
[P4-02]左同名半盲患者における代償戦略の適正化と不安感の関連性
ー右周辺視の活用に着目した一事例報告ー
*平見 彩貴1、藤原 瑶平1、石橋 凜太郎1、市村 幸盛1 (1. 村田病院)
【はじめに】
移動が自立している半盲者は,非半盲側よりも半盲側に多く視線を向け,事前に危険な状況を把握している (Pundlikら,2023).今回,左同名半盲を呈した一症例に対し,代償戦略の適正化を図ることにより歩行の自立度が向上したため報告する.
【症例】
右後頭葉梗塞を発症した80歳代女性.第37病日時点で運動麻痺はなく,既往による右上1/4盲に加えて黄斑回避のある左同名半盲を呈し,残存する右周辺視での視認は保たれていた.受動的注意の課題として,PC上の縦5列,横7列の計35個のランダムに点滅するオブジェクトへの反応課題(以下,受動課題)では,左側2列に見落としを認めた.歩行は,左空間の通行人の見落としや,一度視認した情報の忘却があり,見守りを要した.視線計測装置を用いた歩行時の評価では左空間へ頻回に視線移動を行っており,「左にある人や物から視線を逸らすとすぐに忘れる」と記述し,主観的な不安感は10/10点であった.視線を左空間に定位させて右周辺視で視認させると見落としや忘却はなく,不安感は5/10点に減少した.
【病態解釈と治療仮説】
移動時の空間把握に関しては中心視よりも周辺視の方が大きな役割を担っている(Previc,1990)が,症例は左空間へ頻回に視線移動を行うという代償戦略により,右周辺視での視認が行えず,見落としや忘却が生じていた.そこで,視線を左空間に定位させて右周辺視で視認させると,視線移動の減少および不安感の軽減を認めたことから,これに対する介入を行うことで歩行の自立度向上が期待できると考えた.
【介入】
机上で視線を左空間に定位させた状態で,右空間の動的刺激を周辺視で視認する課題や,移動時に随時変化する視覚情報に対して,右空間を周辺視で視認する介入を1日1時間,5日間実施した.
【結果と考察】
受動課題での見落としはなく,歩行は修正自立となった.歩行時の視線は,左空間に定位させる場面が増加し,「右は何となく見るだけで認識できる」と記述し,主観的な不安感は2/10点となった.今回,右周辺視で視認することを学習したことで,代償戦略の適正化が図られ,残存する視野を有効に活用することが可能となり,歩行の自立度向上に繋がったと考えられた.
【倫理的配慮】
本発表に関して,症例に口頭にて説明し同意を得た.
移動が自立している半盲者は,非半盲側よりも半盲側に多く視線を向け,事前に危険な状況を把握している (Pundlikら,2023).今回,左同名半盲を呈した一症例に対し,代償戦略の適正化を図ることにより歩行の自立度が向上したため報告する.
【症例】
右後頭葉梗塞を発症した80歳代女性.第37病日時点で運動麻痺はなく,既往による右上1/4盲に加えて黄斑回避のある左同名半盲を呈し,残存する右周辺視での視認は保たれていた.受動的注意の課題として,PC上の縦5列,横7列の計35個のランダムに点滅するオブジェクトへの反応課題(以下,受動課題)では,左側2列に見落としを認めた.歩行は,左空間の通行人の見落としや,一度視認した情報の忘却があり,見守りを要した.視線計測装置を用いた歩行時の評価では左空間へ頻回に視線移動を行っており,「左にある人や物から視線を逸らすとすぐに忘れる」と記述し,主観的な不安感は10/10点であった.視線を左空間に定位させて右周辺視で視認させると見落としや忘却はなく,不安感は5/10点に減少した.
【病態解釈と治療仮説】
移動時の空間把握に関しては中心視よりも周辺視の方が大きな役割を担っている(Previc,1990)が,症例は左空間へ頻回に視線移動を行うという代償戦略により,右周辺視での視認が行えず,見落としや忘却が生じていた.そこで,視線を左空間に定位させて右周辺視で視認させると,視線移動の減少および不安感の軽減を認めたことから,これに対する介入を行うことで歩行の自立度向上が期待できると考えた.
【介入】
机上で視線を左空間に定位させた状態で,右空間の動的刺激を周辺視で視認する課題や,移動時に随時変化する視覚情報に対して,右空間を周辺視で視認する介入を1日1時間,5日間実施した.
【結果と考察】
受動課題での見落としはなく,歩行は修正自立となった.歩行時の視線は,左空間に定位させる場面が増加し,「右は何となく見るだけで認識できる」と記述し,主観的な不安感は2/10点となった.今回,右周辺視で視認することを学習したことで,代償戦略の適正化が図られ,残存する視野を有効に活用することが可能となり,歩行の自立度向上に繋がったと考えられた.
【倫理的配慮】
本発表に関して,症例に口頭にて説明し同意を得た.
