講演情報
[P4-09]重度失語症患者に対するコミュニケーション手段再学習への試み
*岡崎 颯士1、湯浅 美琴1 (1. JAとりで総合医療センター)
【はじめに】
意思疎通が困難な失語症患者に対し,認知課題において発話媒介行為を意識させる事に重点を置いた介入を行った事で簡単な意志疎通が可能となった為報告する.
【症例】
70歳代男性で,左中大脳動脈領域に広範な脳梗塞を認めた.神経心理学的所見は,失語症,失行症,注意障害,右半側空間無視を認めた. 神経心理検査は拒否があり実施困難だった.臨床所見から再帰性発話を呈する重度失語症と判断した.Boston失語症診断検査の重度評価尺度は0点だった.入院時から何かを訴えるが,「あそこ」や「あお」以外の発話が困難であり何も伝えられず怒鳴る場面が多く見られた.何かを尋ねてもYes/no反応や指差し等の表出は得られず,コミュニケーションに難渋した.
【病態解釈】
症例は自身の発話内容を客観的に観測できない状態であり,Alajouanineの再帰性発話の過程の第一段階に相当すると考えた.また,他者の表情,言語,身振り等の解読が困難な為,他者の反応に注意が向けられないと考えた.自身の発話を観測できない事と他者の反応を解読できない事で,発話媒介行為に気づけず伝達手段を修正する為の情報が得られない為,発語行為を繰り返していると考えた.
【治療と経過】
治療は解読練習から行った.練習開始直後は差異の解読は困難であり, 選択行動も見られず発語行為を続けていた.ガイドしながら解読練習を行っていくと徐々に表情の解読が可能となり,会話時も他者の表情や反応に注目するようになった.頷きや「うん」等の産生も得られるようになった. 他者の反応に注目できるようになった為,非言語的産生練習を開始した.練習では指差しや頷き,首振り等の産生を促した.セラピストは症例に伝わるように反応を返し,発語媒介行為への気づきを促した.最初は何の反応も得られなかったが,症例がカードに触れたり,頷きが見られる度にセラピストが伝わったかを明確に伝えると,徐々にカードを自ら取ったり,指差が得られるようになった.退院間近には頷き等のYes/no反応も見られ,スタッフや妻との意志疎通が可能となった.
【考察】
症例は他者の反応に注目できるようになった事で,他者とのコミュニケーションで発話媒介行為に気づき,意思伝達手段を客観的に観測できるようになった為,非言語的産生が可能となり,他者との意思伝達が成立したと考えた.
【倫理的配慮】
本人,家族に説明し同意を得た.
意思疎通が困難な失語症患者に対し,認知課題において発話媒介行為を意識させる事に重点を置いた介入を行った事で簡単な意志疎通が可能となった為報告する.
【症例】
70歳代男性で,左中大脳動脈領域に広範な脳梗塞を認めた.神経心理学的所見は,失語症,失行症,注意障害,右半側空間無視を認めた. 神経心理検査は拒否があり実施困難だった.臨床所見から再帰性発話を呈する重度失語症と判断した.Boston失語症診断検査の重度評価尺度は0点だった.入院時から何かを訴えるが,「あそこ」や「あお」以外の発話が困難であり何も伝えられず怒鳴る場面が多く見られた.何かを尋ねてもYes/no反応や指差し等の表出は得られず,コミュニケーションに難渋した.
【病態解釈】
症例は自身の発話内容を客観的に観測できない状態であり,Alajouanineの再帰性発話の過程の第一段階に相当すると考えた.また,他者の表情,言語,身振り等の解読が困難な為,他者の反応に注意が向けられないと考えた.自身の発話を観測できない事と他者の反応を解読できない事で,発話媒介行為に気づけず伝達手段を修正する為の情報が得られない為,発語行為を繰り返していると考えた.
【治療と経過】
治療は解読練習から行った.練習開始直後は差異の解読は困難であり, 選択行動も見られず発語行為を続けていた.ガイドしながら解読練習を行っていくと徐々に表情の解読が可能となり,会話時も他者の表情や反応に注目するようになった.頷きや「うん」等の産生も得られるようになった. 他者の反応に注目できるようになった為,非言語的産生練習を開始した.練習では指差しや頷き,首振り等の産生を促した.セラピストは症例に伝わるように反応を返し,発語媒介行為への気づきを促した.最初は何の反応も得られなかったが,症例がカードに触れたり,頷きが見られる度にセラピストが伝わったかを明確に伝えると,徐々にカードを自ら取ったり,指差が得られるようになった.退院間近には頷き等のYes/no反応も見られ,スタッフや妻との意志疎通が可能となった.
【考察】
症例は他者の反応に注目できるようになった事で,他者とのコミュニケーションで発話媒介行為に気づき,意思伝達手段を客観的に観測できるようになった為,非言語的産生が可能となり,他者との意思伝達が成立したと考えた.
【倫理的配慮】
本人,家族に説明し同意を得た.
