講演情報

[P4-11]中等度感覚性失語・全般性注意機能障害を呈する症例に対し認知神経リハビリテーションを実施した経過の報告

*濵田 緑1、湯浅 美琴1、豊田 和典1 (1. JAとりで総合医療センター)
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【はじめに】本症例は中等度感覚性失語に加え全般性注意機能障害を呈しており,文脈のズレ,多弁でまとまりのない発話により会話の疎通性が低下していた.文脈の読み取りや伝達行動の調整に重点をおき介入を行ったので経過を報告する.【症例】70代,女性,右利き,頭部CTにて左後頭葉に出血を認め,保存的加療目的に入院となった. RCPMは23/36点と年齢平均範囲内だった.SLTA上,中等度の感覚性失語を認めた.呼称は単語レベルから低下を認めた.喚語困難の他,無関連性錯語や意味性錯語も認められた.表情カードを用いた評価的訓練では,落ち込んでいる顔を「顔に縦線が入っている」と文脈や絵の全体の意味を考慮せず,絵の一部を言語化した.SLTAまんがの説明でも同様の反応が見られた.会話時は常に焦燥感があり,多弁でまとまりのない一方的な発話が目立った.目標語を表出できても納得せず語を探し続けていた.一見会話が成立しているようで,話題を細部まで理解することは難しかった.【病態解釈】全体と部分の関係性や意味の類推が難しく,文脈に適した意味情報の構築が障害されていると考えた.また,円滑な会話には,相手の伝達意図や相手への伝わり方の予測,予測と結果の比較・照合,必要に応じて自身の行為を調整することが求められるが,本症例はこのサイクルを回す能力が低下していると考えた. 【介入と結果】40分の介入を週5回,4週間実施した.①表情カードを用い,感情や状況を類推させ,対話により伝達意図をすり合わせた.次第に感情や経験,エピソードが自発的に産生されるようになった.②物語絵カードを用い,文脈上最も価値のある差異について解読,産生を促した.Thは本症例の表出通りにカード選択しフィードバックを行った.開始時はThの指摘により修正していたが,次第に自己での修正が見られるようになった.終了時評価では,呼称が10/20正答から20/20正答に改善した.まんがの説明は段階4から段階5へ改善し,簡潔な説明が可能となった.会話では,自ら話を休止したり,「これじゃ伝わらないわね」など,伝達行為への気づきがみられた. 【考察】文脈に適した意味を類推し,対話による伝達行為の調整を行ったことで,呼称だけでなく,言語機能系(Anokin)の改善にも寄与したと考える.【説明と同意】個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本人から同意を得た.