講演情報
[P5-01]上腕骨外科頚骨折受傷後の外観に対する恐怖から生じた上肢不使用へのミラーを用いた介入効果
*新田 麻美1、山根 将弘1、壹岐 伸弥2、長倉 侑祐3、矢野 恵夢4、平島 淑子5 (1. 北海道医療大学病院リハビリテーション室、2. 川口脳神経外科リハビリクリニック、3. たつえクリニック、4. 摂南総合病院、5. 北海道医療大学病院リハビリテーション科)
【はじめに】
四肢外傷後に、組織損傷とは不均衡な疼痛と運動障害が生じることがある。今回、受傷時の恐怖体験と術後の患側上肢の外観への恐怖から患側上肢の不使用が生じた事例に、記憶や情動も含む求心性情報の統合を目的としたミラー介入が奏功したため報告する。
【症例】
70歳代女性。雪道で転倒し右上腕骨外科頚骨折後 に骨接合術施行。外来リハ開始時(17病日)は可動域制限(肩屈曲50°、外転20°、回内20°、回外60°、手背屈20°、掌屈40°)と右上肢末梢部に腫脹を認めた。運動時痛NRSは手7、肩2、肩の痛みと障害指標はSPADI 60%、肩の身体知覚異常はFreSAQ 14点で身体イメージ項目が加点された。転倒時の記憶や血腫など外観の恐怖から「右手は動かせない」と語り、「腕が腫れて太い」「手は赤く熱い」と実際の部位や状態とは異なる意識経験を訴えた。主観的な右上肢使用頻度は0%だった。右上肢の空間課題後は即時的な可動域拡大や疼痛軽減を認めたが、右上肢の外観への恐怖によりADLでの使用には至らなかった。
【病態解釈】
本事例では、受傷後の外観に対する恐怖に加えて、受傷経験による認知の変質が右手の不使用を助長していると考えた。
【治療アプローチおよび経過】
週1回60分の理学療法を3ヵ月間実施した。右上肢の外観への恐怖を是正する目的でミラーを用いて健側上肢を映し、段階的に①右上肢に見立てた鏡像肢を見る、②同部位への接触、③健側上肢の動きに合わせた右上肢の運動を行った。①②条件では「見た目が健康でなんともない感じ」と右手の外観の認識が変化し、③では自動運動が可能となった。
【結果】
112病日時、肩関節屈曲120°、外転80°、前腕回内60°、回外90°、手関節背屈40°、掌屈50°、運動時痛NRSは手3、肩1、SPADI35.5%、FreSAQ15点に改善した。主観的な右手使用頻度は「食事」「洗顔」などのADLで50%以上に増加し、「今まで動かないと思い込んでいた」と認識が変化した。
【考察】
Perfetti (2007) は、行為生成時の求心性情報の統合の不一致が疼痛を惹起すると提唱している。今回、健側を映すミラー介入により受傷前に近い視覚情報と体性感覚の統合が促進されたことが、疼痛予測の是正と上肢の使用促進に寄与した可能性がある。
【倫理的配慮(説明と同意)】
症例に発表について十分に説明を行い同意を得た。
四肢外傷後に、組織損傷とは不均衡な疼痛と運動障害が生じることがある。今回、受傷時の恐怖体験と術後の患側上肢の外観への恐怖から患側上肢の不使用が生じた事例に、記憶や情動も含む求心性情報の統合を目的としたミラー介入が奏功したため報告する。
【症例】
70歳代女性。雪道で転倒し右上腕骨外科頚骨折後 に骨接合術施行。外来リハ開始時(17病日)は可動域制限(肩屈曲50°、外転20°、回内20°、回外60°、手背屈20°、掌屈40°)と右上肢末梢部に腫脹を認めた。運動時痛NRSは手7、肩2、肩の痛みと障害指標はSPADI 60%、肩の身体知覚異常はFreSAQ 14点で身体イメージ項目が加点された。転倒時の記憶や血腫など外観の恐怖から「右手は動かせない」と語り、「腕が腫れて太い」「手は赤く熱い」と実際の部位や状態とは異なる意識経験を訴えた。主観的な右上肢使用頻度は0%だった。右上肢の空間課題後は即時的な可動域拡大や疼痛軽減を認めたが、右上肢の外観への恐怖によりADLでの使用には至らなかった。
【病態解釈】
本事例では、受傷後の外観に対する恐怖に加えて、受傷経験による認知の変質が右手の不使用を助長していると考えた。
【治療アプローチおよび経過】
週1回60分の理学療法を3ヵ月間実施した。右上肢の外観への恐怖を是正する目的でミラーを用いて健側上肢を映し、段階的に①右上肢に見立てた鏡像肢を見る、②同部位への接触、③健側上肢の動きに合わせた右上肢の運動を行った。①②条件では「見た目が健康でなんともない感じ」と右手の外観の認識が変化し、③では自動運動が可能となった。
【結果】
112病日時、肩関節屈曲120°、外転80°、前腕回内60°、回外90°、手関節背屈40°、掌屈50°、運動時痛NRSは手3、肩1、SPADI35.5%、FreSAQ15点に改善した。主観的な右手使用頻度は「食事」「洗顔」などのADLで50%以上に増加し、「今まで動かないと思い込んでいた」と認識が変化した。
【考察】
Perfetti (2007) は、行為生成時の求心性情報の統合の不一致が疼痛を惹起すると提唱している。今回、健側を映すミラー介入により受傷前に近い視覚情報と体性感覚の統合が促進されたことが、疼痛予測の是正と上肢の使用促進に寄与した可能性がある。
【倫理的配慮(説明と同意)】
症例に発表について十分に説明を行い同意を得た。
