講演情報

[P5-03]両側変形性膝関節症者の痛みに対する
疼痛神経科学教育(PNE)とポジティブ日記を併用した介入報告
-運動恐怖感と自己効力感に着目して-

*前田 麗ニ1、豊田 拓磨2、井村 亘3、小林 敬幸1、藤井 斗偉1 (1. 内田整形外科医院リハビリテーション部、2. 愛宕病院リハビリテーション部、3. 玉野総合医療専門学校 作業療法学科)
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【はじめに】
痛覚変調性疼痛は身体的要因に加え心理的・認知的要因の関与が強く,とくに運動恐怖感が疼痛の持続や増強に寄与する(Luque-Suarezら,2019).今回,両側変形性膝関節症を呈した症例の痛みに対する疼痛神経科学教育(PNE)とポジティブ日記を併用した作業療法により,運動恐怖感や歩行に対する自己効力感が改善したため報告する.

【症例紹介】
両側変形性膝関節症を呈した80歳台女性である.15年前より両膝関節痛を自覚し,膝関節に対する荷重や歩行に対して強い恐怖感があった.身辺動作は自立し,認知機能に問題はなかった.初期評価では,痛みに対してNRS(左/右)で立位時4/8,歩行時4/8,運動恐怖心に対してTSK55点,歩行に対してTUG32.38秒,日本語版改定GES14点であった.日常生活における遂行能力の自己認識についてCOPMを(重要度/遂行度/満足度)実施し,料理10/1/1,洗濯10/1/1,買い物10/1/1であった.

【病態解釈】
長期的な疼痛が痛みに対する認識を変容させ,膝関節に荷重すると痛いと思考する運動恐怖感や歩行に対する自己効力感の低下が生じ,痛覚変調性疼痛を増強させていると解釈した.

【介入】
初期は,荷重に対する恐怖心の軽減を目的として座位でボールなど硬度が異なる物体を活用した荷重課題から始めた.併せて,痛みに対する誤認識を是正する目的でPNEを月に1回実施した.内容は痛みに対する不安や恐怖が悪循環を生むことを示すイラストを提示し口頭で説明した.介入1ヶ月後に立位課題や手すり歩行を実施した.介入3か月後にADLを想定した課題を実施した.介入期間中は,良かった出来事や痛みの程度を記載するポジティブ日記にて日々の状態をフィードバックした.

【結果】
介入5ヵ月後の評価は,NRSが立位時0/0,歩行時2~3/4,TSK34点,TUG14.19秒,GES58点と改善し荷重や歩行に対する恐怖感が減少した.COPMは料理10/6/6,洗濯10/6/6,買い物10/4/4と改善した.

【考察】
PNEにて疼痛に対する誤認識が是正され,運動恐怖感が軽減し,段階的な荷重課題により歩行に対する自己効力感が向上したと考える.また,ポジティブ日記で過去と現在の疼痛の比較がADLの遂行促進につながったと推察する.

【倫理的配慮】
発表に際し症例に口頭で説明し同意を得た.