講演情報
[P5-05]慢性疼痛を有する大腿骨頸部骨折術後患者に対する認知課題が奏功した訪問リハビリテーション症例―足底への認知課題が疼痛とQOLに及ぼす影響―
*池田 勇太1、壹岐 伸弥2、赤口 諒1 (1. 摂南総合病院リハビリテーション科、2. 川口脳神経外科リハビリクリニック)
【はじめに】
疼痛は感覚・認知・情動の側面があり,QOLと密接に関係するが,慢性疼痛を有する症例への介入がQOL向上に及ぼす有効性の報告は限定的である。本報告では,荷重時に疼痛が増悪した慢性疼痛を有する大腿骨頸部骨折術後の症例に対して足底への認知課題が奏功した要因について,疼痛とQOLの経過から考察する。
【症例】
症例は左大腿骨頸部骨折術後の60歳代女性である。17年前の脳梗塞発症により左下肢に感覚運動障害と慢性疼痛を有していた(Brunnstrom Stages下肢Ⅲ)。術後118病日より訪問リハを開始し,術後153病日に左下肢荷重練習を開始したところ,左足関節以遠に疼痛増悪を認めた。疼痛評価は,Numerical Rating Scale(NRS)最大10点,PainDETECT22/38点で皮膚感覚由来の神経障害性疼痛を呈していた。また,左下肢は「1.5倍に腫れている」「体重を乗せると痛くなりそうで怖い」と身体イメージの変質,運動恐怖感,破局的思考を訴えた。表在感覚(点数法)は左足趾50/10(過敏)で足底圧の識別が困難であり,QOL評価のEuroQol 5dimensions 5-level(EQ-5D-5L)は0.13/1と著しい低下を認めた。立位では右優位荷重を左右均等と誤認し,左下肢荷重時に左母趾過屈曲に伴う疼痛を認めた。これらより,疼痛の増悪は慢性疼痛に伴う運動恐怖感や破局的思考に加えて,荷重時の足底圧情報の誤認に伴う知覚と運動の不一致が関与していると推察された。そこで,認知的言語の比較を求める足底への接触課題を週2回各30分,計9回実施した。
【経過】
術後202病日時,表在感覚は左足趾20/10,NRS7点,EQ-5D-5Lは0.28へ改善した。また,「右に体重が多く乗っているのがわかる」「痛みと怖さがましになって動こうと思える」と自己認識の向上が得られたが,運動恐怖感,破局的思考は著明な変化を認めなかった。
【考察】
知覚と運動の不一致の是正を求める足底への接触課題が感覚的疼痛の改善に伴うQOL向上に有効であることが示唆された。一方,認知・情動的側面の改善は不十分であり,段階的な運動療法,薬物療法などを併用する必要性が考えられた。
【倫理的配慮,説明と同意】
症例には,個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本発表に関して説明を行い口頭と紙面にて同意を得ている。
疼痛は感覚・認知・情動の側面があり,QOLと密接に関係するが,慢性疼痛を有する症例への介入がQOL向上に及ぼす有効性の報告は限定的である。本報告では,荷重時に疼痛が増悪した慢性疼痛を有する大腿骨頸部骨折術後の症例に対して足底への認知課題が奏功した要因について,疼痛とQOLの経過から考察する。
【症例】
症例は左大腿骨頸部骨折術後の60歳代女性である。17年前の脳梗塞発症により左下肢に感覚運動障害と慢性疼痛を有していた(Brunnstrom Stages下肢Ⅲ)。術後118病日より訪問リハを開始し,術後153病日に左下肢荷重練習を開始したところ,左足関節以遠に疼痛増悪を認めた。疼痛評価は,Numerical Rating Scale(NRS)最大10点,PainDETECT22/38点で皮膚感覚由来の神経障害性疼痛を呈していた。また,左下肢は「1.5倍に腫れている」「体重を乗せると痛くなりそうで怖い」と身体イメージの変質,運動恐怖感,破局的思考を訴えた。表在感覚(点数法)は左足趾50/10(過敏)で足底圧の識別が困難であり,QOL評価のEuroQol 5dimensions 5-level(EQ-5D-5L)は0.13/1と著しい低下を認めた。立位では右優位荷重を左右均等と誤認し,左下肢荷重時に左母趾過屈曲に伴う疼痛を認めた。これらより,疼痛の増悪は慢性疼痛に伴う運動恐怖感や破局的思考に加えて,荷重時の足底圧情報の誤認に伴う知覚と運動の不一致が関与していると推察された。そこで,認知的言語の比較を求める足底への接触課題を週2回各30分,計9回実施した。
【経過】
術後202病日時,表在感覚は左足趾20/10,NRS7点,EQ-5D-5Lは0.28へ改善した。また,「右に体重が多く乗っているのがわかる」「痛みと怖さがましになって動こうと思える」と自己認識の向上が得られたが,運動恐怖感,破局的思考は著明な変化を認めなかった。
【考察】
知覚と運動の不一致の是正を求める足底への接触課題が感覚的疼痛の改善に伴うQOL向上に有効であることが示唆された。一方,認知・情動的側面の改善は不十分であり,段階的な運動療法,薬物療法などを併用する必要性が考えられた。
【倫理的配慮,説明と同意】
症例には,個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本発表に関して説明を行い口頭と紙面にて同意を得ている。
