講演情報
[SY-01]上肢機能の回復可能性と治療ストラテジーを把持力制御と認知神経リハビリテーションの視点から紐解く
*赤口 諒1 (1. 摂南総合病院)
私たちの手を用いた行為の大半は、周囲の世界にある対象に向けられている。なかでも物体を把持する動作は日常生活で頻繁に行われ、把持した物体を操作することで行為が展開される。物体把持動作は、対象の特性を多様な情報から把握し、その特性に応じて把持力を調整することで課題を遂行する。把持力を精密に制御するためには、自身の運動出力とその結果として得られる感覚フィードバックを照合し、必要に応じて修正することが不可欠である。感覚情報に基づく運動調節は、動作実行中のon line制御だけでなく、照合・修正した誤差情報を次に行う動作に反映させるというoff line制御(予測調節や運動学習)としても重要な役割を担う。
脳卒中患者では、運動機能が保たれていても、感覚フィードバックが欠如した場合、物体把持動作が拙劣となる。実際、物体把持力計測では過剰な力発揮と予測制御の停滞が観察される。こうした患者は、日常生活では物体を落としてしまうだけでなく道具の使用にも困難を呈するが、多くの場合、過剰な力発揮の自覚が乏しい。そのため「力が入りにくい」と内省し、さらに過剰な把持力発揮で代償するという悪循環に陥ることも少なくない。
認知神経リハビリテーションにおいては、外部観察から行為の異常を捉え、なぜそのように動くのかを、行為の機能システムの観点から内部観察によって病態を解釈していく。介入においては、機能システムを踏まえつつ多様な感覚情報へ注意の活性化を図り、身体への気づきや知覚を促しながら行為を再構築していく。しかし、内部観察をするにあたって外部観察と患者の内省は必ずしも一致せず、患者の内省と言語的記述もまた乖離することがある。そのような不明瞭さを補い病態に迫るためには、外部観察を高い精度で捉え、内部観察との関連を分析することが重要となる。
私たちが外部観察で捉えられるのは「動作」という可視的な要素にとどまり、力の調節のような身体内部で生じる変化を直接把握することは難しい。把持力計測によって外部観察では捉えきれない「力」の要素を評価することは、感覚運動制御という不可視の過程を可視化し、患者の内省の背景にある病態を解釈し、介入指針を立案するための手がかりとなる。
本シンポジウムでは、上肢機能回復可能性と治療ストラテジーを、把持力計測による客観的指標と内部観察を通じた感覚運動制御の視点から検討し、議論を深める場としたい。
脳卒中患者では、運動機能が保たれていても、感覚フィードバックが欠如した場合、物体把持動作が拙劣となる。実際、物体把持力計測では過剰な力発揮と予測制御の停滞が観察される。こうした患者は、日常生活では物体を落としてしまうだけでなく道具の使用にも困難を呈するが、多くの場合、過剰な力発揮の自覚が乏しい。そのため「力が入りにくい」と内省し、さらに過剰な把持力発揮で代償するという悪循環に陥ることも少なくない。
認知神経リハビリテーションにおいては、外部観察から行為の異常を捉え、なぜそのように動くのかを、行為の機能システムの観点から内部観察によって病態を解釈していく。介入においては、機能システムを踏まえつつ多様な感覚情報へ注意の活性化を図り、身体への気づきや知覚を促しながら行為を再構築していく。しかし、内部観察をするにあたって外部観察と患者の内省は必ずしも一致せず、患者の内省と言語的記述もまた乖離することがある。そのような不明瞭さを補い病態に迫るためには、外部観察を高い精度で捉え、内部観察との関連を分析することが重要となる。
私たちが外部観察で捉えられるのは「動作」という可視的な要素にとどまり、力の調節のような身体内部で生じる変化を直接把握することは難しい。把持力計測によって外部観察では捉えきれない「力」の要素を評価することは、感覚運動制御という不可視の過程を可視化し、患者の内省の背景にある病態を解釈し、介入指針を立案するための手がかりとなる。
本シンポジウムでは、上肢機能回復可能性と治療ストラテジーを、把持力計測による客観的指標と内部観察を通じた感覚運動制御の視点から検討し、議論を深める場としたい。
