講演情報
[I-PSY2-4]小児期独自の肺高血圧病態に対する治療・管理の最適化に向けて~PHラットモデル、肺発達関連肺高血圧・IPAHのスクリーニングと早期診断~
○澤田 博文1,3, 三谷 義英2,3, 武岡 真美3, 坪谷 尚季3, 大矢 和伸3, 乙部 裕3, 淀谷 典子3, 大橋 啓之3, 原田 智哉3, 丸山 一男4, 平山 雅浩3 (1.三重大学医学部附属病院・小児AYAがんトータルケアセンター, 2.三重大学医学部附属病院・周産母子センター, 3.三重大学医学部 小児科学, 4.鈴鹿医療科学大学 救命救急科)
キーワード:
肺高血圧、肺発達疾患、モデル動物
小児肺高血圧(PH)は、成人と多くの共通点があるが、疫学、病因、診断・評価・治療法等に違いがあり、予後最適化のため独自のアプローチが必要である。気管支肺異形成(BPD)、先天性横隔膜ヘルニア (CDH)などの肺発達疾患(developmental lung disorders、DLD)関連PH(DLD-PH)が多いことは特徴的である。また本邦独自の学校心臓検診は、特発性・遺伝性肺高血圧症(IHPAH)の診断における役割が報告される。発表では、小児期PHについての当研究グループの最近の知見から3点を共有したい。(1)炎症機序阻害と周産期障害ラットモデルの病態解析:ケモカイン受容体受容体欠損ratでは、既存のPH治療薬の効果が促進され、その機序として、血管内皮障害/BMPR2-TGFβ不均衡の改善、平滑筋脱分化の抑制が示された。また、周産期の低酸素やNO阻害は、周産期侵襲により、エピゲノム変化や肺発達阻害等の機序を介しPH増悪につながる。(2)DLD-PHの治療管理: 当医療圏において、超早産児56名中、PH治療を要した10名(18%)ならびに、CDH49名中、長期PH治療を要した7名(18%)において、2歳時には心エコーではPHの軽快を確認したが、心臓カテーテル検査では、大多数がmild PHを示し、長期フォローが必要である。(3)小児期IPAH診断における心電図スクリーニングの意義: 全国の小児循環器修練施設において、診断時年齢6歳以上のIHPAH患者88例 (男51、女37、診断年齢10.7歳)の調査では、36例(41%)は学校検診を契機に診断され、多くは高度PH(mPAP≒60mmHg)を示すが、症状の軽い(WHOFC I-II)の患者であった。心電図は、合計219回分が収集され、診断時88例、診断前29例(33%)の心電図を解析した。心電図上は、80%の患者でRVHを示す。小児PHの特徴を捉え、またわが国の医療保健体制も踏まえ、小児PHに特化した管理法、治療法を、独自に議論していく必要がある。