講演情報

[II-PPD2-3]左心低形成症候群に対するBilateral PABの成績と問題点

小森 悠矢1, 和田 直樹1, 松沢 拓弥1, 上田 知実2, 矢崎 諭2, 嘉川 忠博2, 正谷 憲宏3 (1.榊原記念病院 小児心臓血管外科, 2.榊原記念病院 小児循環器科, 3.榊原記念病院 小児集中治療科)
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キーワード:

HLHS、bil PAB、Fontan

【背景】HLHSに対するBil PABはNorwood手術のタイミングを遅らせるという利点がある一方で,将来の両側PAの発育不良に対する懸念が残る.以前は明らかな狭窄部位に対しPA形成を行なっていたが近年では低形成があれば積極的にring付き人工血管を用いて形成をしている.【対象と目的】2005/1-2024/12にHLHS(類縁疾患)に対してbil PAB後Norwood手術を行った63例を対象とし,手術成績や予後,治療戦略変更による変化,遠隔期の問題を明らかにする.【結果】PABは日齢11で行われており,Norwoodまでの期間は24日だった。BDG到達:49,Fontan到達:41,BDG/Fontan待機中が3/7だった.PA形成はBDG時:2,Fontan時:23,Fontan後:1であり,素材はウシ心膜6:、ePTFE:9,ring付き人工血管:11だった.PTAはPAB後:2,Norwood後:24,Glenn後:21で施行.Fontan後は17認めたが,そのうちPA形成を行なった症例は10例であり,ring付き人工血管を使用した症例は1例のみであった.PA形成を行った症例のみで見てみると,follow期間は短期間ではあるが,ring付き/それ以外のFontan後のPTA回避率は1年/3年=100%/83.3% / 53.8%/46.1%だった.Fontan術後3.8年時に施行したカテーテル検査では,ring付き症例/それ以外でPAI=207/176(P=0.06),CVP=13.7/14.2,Rp=1.3/1.2であり,方針変更でよりPAの発育を得られている傾向にあった.遠隔期の問題点としてはPLE:2, FALD:7などを認めたが、2例を除く全てがPA形成を行なっていない症例であり,ring付き使用症例は認めなかった.【結語】bil PAB後PAの発育には難渋していたが,PA形成,PTAを組み合わせることで比較的多くの症例でBDG,Fontan到達自体は出来ていた.手術介入を必要とするようなPA低形成症例も形成自体がうまくいけば経過は良好であり,特にring付き人工血管での形成は遠隔期のカテーテル治療回避の可能性やPLE, FALD回避の可能性が示唆された.積極的なPA形成が予後を改善する可能性がある.