講演情報

[00哲-口-04]スポーツ科学を計算可能性、決定可能性の観点で視る

*齋藤 健治1 (1. 名古屋学院大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
スポーツ科学は、自然科学の手法を適用した計測や分析により発展してきた。その最大の目標は「競技力の向上」であったり、「健康の増進」であったりするが、人間を対象にしたときの問題の複雑さやあいまいさは、実際のところ本質的にはそれら手法の適用の限界を超えている。したがって、人間を対象にしたスポーツ科学研究では、計測・分析手法の適用性や結果の解釈の見通しをよくしようとする。たとえばパフォーマンスの結果や成績に影響しそうな不確定な要因を誤差扱いにして条件を絞ることにより、それらの妥当性を高めている。ところでFaizalら(2025)は、重力、時空や特異点に関わる物理法則の最深部が計算手順(アルゴリズム)ではなく、より根源的な論理構造や数学的性質に支配されていると報告している。つまり、物理法則の中にも数学的に決定不能な命題が入り込む可能性があり、アルゴリズムでは完全に扱えない問題があると報告している。このような非アルゴリズム性が物理の世界でも現れるのであれば、人間という対象においても同様の性質は認められるだろうことは想像に難くない。この非アルゴリズムとは、対象を分析しようとしたときに計算量が膨大になることから生じる現実的な計算不可能性をいうのではなく、原理的にどんなアルゴリズムでも値を決められない決定不能性、計算不可能性を指している。例えば、スポーツ科学研究の例に落とし込めば、このトレーニング方法には確固たる効果があるかどうかの判定において、YesともNoとも言えない問題があるということである。トレーニング課題においては、選手の現在の能力、状態に応じてトレーニング負荷や種類を決めるが、その負荷や種類が選手の能力を変化させるため、その変化した能力が、次の負荷設定や種類選択に影響するという自己参照ループが生じる。このような自己参照が決定不能や計算不可能性を生むという。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン