講演情報

[09コ-ポ-02]中堅高校野球監督における価値葛藤の生成・調整プロセス「勝利追求」と「教育的配慮」のはざまで

*相馬 幸樹1、川村 卓2 (1. 筑波大学大学院、2. 筑波大学)
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高校野球の指導現場では,少子化や部活動改革,スポーツ科学化,不適切指導問題への社会的批判などを背景として,指導者には「競技成績の追求」と「教育的価値の実現」の両立が求められている.特にある程度経験を積んだ中堅期の高校野球監督は,学校組織,保護者,OB会など多方向からの期待を受けながら,勝利と育成の狭間で価値葛藤を経験していると考えられる.しかし,従来の研究では,指導者の心理的困難やコーチング実践知に関する知見は蓄積されている一方で,監督がどのような構造で葛藤を経験しているのかという質的理解は十分ではない.そこで本研究では,高校野球の中堅監督を対象に,競技成績と教育的価値の両立をめぐる価値葛藤の構造を明らかにすることを目的とした.研究方法には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いた.対象者は,参加校が多い都道府県の高校野球部に所属し,監督歴5年以上20年未満,かつ県大会ベスト8以上の実績を有する中堅高校野球監督7名であった.データ収集には半構造化インタビューを用いた.得られた逐語録を継続的比較分析し,概念生成,カテゴリー化,ストーリーライン作成を進めている.現時点の予備的分析では,監督の価値葛藤は,「指導開始時の価値前提」,「外部勝利要求による価値の揺らぎ」,「両立を意図した厳格化とその破綻」,「限界経験による自己像の崩れ」,「省察を通じた判断基盤の再構築」というプロセスとして整理される可能性が示唆された.また,葛藤への適応様式として,「変容転換型」「調整維持型」「熟成安定型」の3類型が見出されつつある.さらに,「対外的葛藤」「対内的葛藤」「時間的葛藤」という構造的特徴が存在する可能性も示唆された.今後は,理論的飽和を目指しながら,高校野球監督における価値葛藤構造モデルの精緻化を進める予定である.

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