セッション詳細

【シンポジウム60】エビデンスに基づく介護保険における保険者機能強化の推進(国立保健医療科学院企画)

2025年10月31日(金) 9:20 〜 10:50
第3会場 (会議ホール:11階)
座長:大夛賀 政昭(国立保健医療科学院)
   森山 葉子(国立保健医療科学院)
保険者とは,保険事業を運営する主体であり,公的社会保険の場合,国や公的な団体が保険者となる.保険者機能とは,保険運営に係わる機能を指し,介護保険の場合,保険料の徴収,被保険者の資格管理,保険給付,保険福祉事業の実施に加え,市町村介護保険事業計画の策定などが,その言葉の本来的な意味においては想定されてきた.しかしながら,2006 年度以降,地域包括ケアシステムの構築に向けた各種取り組みが進められる中で,保険者機能として想定される内容として,上記に加えて,地域分析による自らの地域特性に合った細かな単位での介護サービス基盤の整備や,地域住民による介護予防・生活支援にかかわる活動や専門職・関係機関間の連携を促進するための仕組みづくりなどもその範疇に入ってきており,その重要性も一層増している. しかし,こうした求められる機能の広がりは一方で,市町村間の取り組み格差をさらに進める要因となっている.2017年改正介護保険法によって,この格差を是正するための都道府県による市町村支援が明確化されるとともに、高齢者の自立支援・重度化防止に向けたPDCAサイクルに基づく取り組みを促す財政的インセンティブ(保険者機能強化推進交付金)が導入されることとなった.市町村を中心として地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築は進められているが,その評価手法は現時点において議論が十分に成熟しているとはいえない.このことは,国によるインセンティブ設計やノウハウ共有の試みが,真の成果(アウトカム)の改善ではなく,形式的な施策のプロセス管理に留まっている可能性を示唆している.日本の超高齢社会が本格化する転換点とされている2040年を見据え,エビデンスに基づいた施策推進(EBPM)を担う介護保険における保険者機能はより重要になってくる.本シンポジウムでは,地域包括ケアシステムの評価に向けた指標設定や財政的インセンティブ設計,そして,EBPMの取組みを全国で底上げするための国・都道府県・市町村等によるデータ分析や人材育成のあり方などを含む,保険者機能強化をめぐる現状や課題を確認しつつ,今後の展望について議論する.

[シンポジウム60-1]介護保険における保険者機能の特徴と評価

*筒井 孝子 (公立大学法人埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科・研究開発センター)

[シンポジウム60-2]保険者機能強化の推進に求められる自治体職員の体制や取り組み-研修の企画・運営経験を通してー

*大夛賀 政昭 (国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)

[シンポジウム60-3]保険者機能強化にむけたロジックモデルとデータ活用-実効的なPDCAサイクルによる事業展開の推進-

*松本 佳子 (一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)

[シンポジウム60-4]都道府県による介護保険者機能強化に向けた計画評価等にかかる市町村支援の実践

*小林 志伸 (長野県健康福祉部健康福祉政策課)