講演情報

[AO-03]服薬アドヒアランスの関連要因に関する国際比較:高血圧症と花粉症患者の多国間調査からの服薬支援業務への示唆

櫻井 秀彦1, 岸本 桂子2, 森藤 ちひろ3 (1.北海道科学大学, 2.昭和医科大学, 3.関西学院大学)
【目的】服薬アドヒアランス研究では日本と海外の研究結果に相違が見られ、支援方策の検討に課題が残されている。本研究では、自覚症状の有無など特性の異なる疾患を対象に共通の測定尺度を用いた国際比較調査を行い、服薬支援に資する知見の抽出を試みた。
【方法】2025年3月に日米英3か国で高血圧症と花粉症患者400名ずつ(計2400名)を対象にweb調査を実施した。目的変数のアドヒアランスは国内外で開発された複数の尺度で評価し、関連要因は自己効力感(結果予期/効力予期/一般性)、患者エンパワメント(健康関与、情報探索、知識向上、治療参画)、3次元の主観的および正誤による客観的ヘルスリテラシー(HL)等の既存尺度で測定した。他に患者の基本的背景を収集した。これら尺度平均値の比較検定と回帰分析により、服薬支援における留意点を探った。
【結果】比較検定では、アドヒアランスの尺度得点は英国が有意に低く、種々の自己効力感や患者エンパワメントの得点は日本が低かった。また、日本人の主観的HLは低い一方で客観的HLは高かった。疾患比較では、総じて花粉症の方が高血圧症より尺度得点が低く、OTC併用割合が高かった。回帰分析では、日本では両疾患ともアドヒアランス尺度と効力予期に関連が見られた。一方で米英は、高血圧症では結果予期との関連の他、両疾患ともに患者エンパワメントとの関連が見られた。全体を通じて文字情報の取得に関わる機能的HLとの関連も見られた。
【考察】日本は米英よりも主観的HLや患者エンパワメントが低く、アドヒアランスとの関連が限定的であった一方で、効力予期が一貫して関連していた。よって薬局薬剤師は患者の自己効力感(特に効力予期)を醸成や、患者教育を通じたHLや患者エンパワメントの向上、更には機能的HLに問題を抱える患者の重点的支援により、アドヒアランスの向上に寄与できる可能性が示唆された。