講演情報

[AP-02-B]胃酸分泌抑制薬がカペシタビンによる手足症候群に及ぼす影響の検証―薬局の電子薬歴データを用いた解析―

岡本 敬介1, 鈴木 直哉2, 谷口 亮央2, 染谷 光洋2, 石川 修平3, 穴田 わかな2, 上田 一奈太1, 鳴海 克哉1,4, 小林 正紀1,4 (1.北海道大学大学院薬学研究院 臨床薬剤学研究室, 2.(株)ナカジマ薬局, 3.北海道大学病院 精神科神経科, 4.北海道大学大学院薬学研究院 臨床薬学教育研究センター)
【目的】経口抗がん薬であるカペシタビン (Cape) は副作用として手足症候群 (HFS) を30-70%の頻度で発症させ、QOLを著しく低下させる。近年、胃酸分泌抑制薬 (ASs) の1種であるプロトンポンプ阻害薬 (PPI) の併用がCapeによるHFSの発現頻度を低下させることが示されている一方で、報告数が少なく、エビデンスとして確立されていない。そこで、本研究では様々な医療機関から処方箋を受け取る薬局の電子薬歴データを活用し、現状の医療実態に即したCape服用患者におけるASsの処方頻度やHFSへの影響を調査することを目的とした。
【方法】2020年4月1日~2024年9月30日の間にCapeが新規に処方され、(株) ナカジマ薬局から処方薬を受け取った18歳以上の患者を対象とした。HFS発症は薬剤服用歴の記載内容から判断し、薬剤服用歴上で初めてHFSの記載があった日を発症日とした。PPI、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、ボノプラザンをASsとし、Cape初回処方日からHFS発症日あるいはCape最終処方日までにASsが処方された者をASs併用群とした。
【結果】Cape服用患者135名のうち、46名がASsを併用しており、ASs併用の有無によって患者背景に有意な差は認められなかった。HFSはASs併用群で25名 (54.3%)、非併用群で42名 (47.2%) に発症したが、両群間で有意な差はなかった (p=0.54)。一方で、HFS発症有無における単変量ロジスティック回帰分析ではCape初回投与量 (mg/day) と処方回数、初回投与時の保湿剤処方、ならびに服用期間中のステロイド外用剤処方がHFS発症のリスク因子として抽出された。
【考察】本研究によりASs併用はCapeによるHFS発症に影響を及ぼさないことが示唆される。一方で、Cape服用期間中のステロイド外用剤処方はHFS発症に対する薬学的介入の指標となると考える。しかし、本研究は薬局の電子薬歴データに基づく後ろ向き解析であり、複数の研究限界を有することから、今後さらなる検討が必要である。