講演情報
[AP-11-B]慢性便秘症の前期高齢者患者を対象とする薬物治療に対する効力感と治療コントロールの乖離に関連する因子の探索的研究
○竹中 道伸1,2, 田中 宇宙2, 光岡 俊成2, 石井 充章2, 櫻井 秀彦2 (1.(有)しらかば薬局, 2.北海道科学大学)
【目的】慢性便秘症は高齢者に多い疾患で、QOLを著しく低下させる。また、心血管疾患リスクを高めるだけでなく、パーキンソン病や慢性腎臓病の原因としても知られている。治療目標は自発排便の達成とQOLの向上だが、臨床では医師が排便回数に着目するのに対し、患者は腹部膨満感などの主観的症状改善を重視し、両者間に認識の乖離があることが問題とされている。本研究では、慢性便秘症の治療薬を継続的に服用する前期高齢者を対象に、薬物治療に対する効力感と治療の実際のコントロールとの間に生じる乖離に関連する因子を探索することで、より患者中心の治療戦略構築を目指す。【方法】医療機関より処方された便秘薬を週4日以上服用している65~74歳の高齢者を対象に、Webアンケート調査を実施した。便秘症の状態、薬物治療に対する効力感、生活習慣、ヘルスリテラシーなどの項目を収集し、便秘症のコントロールの状態と効力感の組み合わせにより「乖離(ギャップ)」の有無を定義し、単回帰・二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】有効回答501件を分析対象とした。コントロール良好群・不良群の双方で、「治療目標の共有」が効力感の乖離を減じる関連にあった。良好群では「胃酸抑制薬(PPIなど)の併用」の効力感が低く乖離を大きくする関係にあること、不良群では、「排便姿勢」が効力感を高くし乖離を大きくする関係にあり、「生活習慣の工夫(腹壁マッサージやキウイ・プルーンの摂取)」の効力感との関係は乖離を小さくする関係にあった。【考察】「治療目標の共有」はコントロールの良否を問わず効力感向上に寄与する。これは医療者と患者が目指す方向性を一致させることが、心理的納得感や自己効力感を高め、ひいては治療満足度やQOLの向上につながるものの、コントロール不良での効力感との乖離は、減薬や中断などで疾患の増悪につながる可能性もあり、慎重な対応の必要性があることが示唆された。
