講演情報

[AP-13-A]調剤補助者配置が対物・対人業務バランスに与える影響

平井 麻紀1, 小室 理沙1, 酒井 理恵1, 丸田 勇樹1,2 (1.(株)フロンティア フロンティア薬局日立店, 2.国際医療福祉大学大学院 薬学研究科)
【目的】 本邦では、2019 年に発出された厚生労働省の「調剤業務のあり方について」により、薬剤師の指示下で一部の調剤行為を薬剤師以外の者が実施できることが明確化され、調剤補助者の活用促進といった対物業務効率化策が推進されている。調剤補助者の活用による業務分担は国際的な潮流であり、薬剤師の業務負担軽減とサービス拡充が可能となる。本研究では、単一薬局を対象に調剤補助者導入前後の各種調剤関連業務時間をタイムスタディにより測定し、薬剤師業務のタスクシフトに向けた示唆を得ることを目的とした。
【方法】本研究は、一施設内の前後比較デザインを用いた。導入前後それぞれ10 日間ずつ、薬剤師10 名が従事する調剤関連業務を間接観察法(タイムスタディ)により分類・測定し、調剤関連(受付から会計まで)、服薬指導、計数調剤の累計時間(分/日)を算出した。共変量として処方応需枚数を投入し、LMM(線形混合モデル)を用いて解析した。すべての統計解析にはIBM SPSS Statistics 30®(日本IBM(株))を用い、有意水準を5 %(両側)とした。
【結果】導入前後で業務指標(調剤関連時間、服薬指導時間、計数調剤時間)を解析した結果、調剤関連時間(推定値 = 3980, p<.001 )と計数調剤時間(推定値 = 368.4, p<.001 )は、それぞれ平均472.8 分と588.4 分の有意な短縮が認められた。一方、服薬指導時間(推定値 = 922.2, p<.001 )は、平均73.6 分の有意な延長が認められた。
【考察】調剤補助者導入により創出された時間が服薬指導へシフトし、薬剤師の専門性を活かした薬学的介入が量的に拡大したと推察される。これは服薬アドヒアランス改善、副作用早期発見、在宅療養支援強化など、患者アウトカム向上に寄与し得る。調剤補助者の戦略的配置は業務効率とサービスの質向上を同時達成可能と示され、対物・対人業務バランス是正に向けた政策的取り組みを裏付ける結果である。