講演情報

[教育講演]「患者のための薬局ビジョン」×「薬局DX」=薬剤師が向かう先

紀平 哲也 (厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課長)
我が国の65歳以上の高齢者の人口割合は、高齢化社会(7%超)、高齢社会(14%超)、超高齢社会(21%超)の時代を過ぎ、2024年では29.3%となっています。都道府県別では、最も高い秋田県の39.5%をはじめ、30%を超える都道府県が36を数えます。二次医療圏や市町村単位ではさらに高齢化が進んでいる地域がある中、地域住民の生活を支える上で、薬剤師の存在価値が問われています。
 2015年にとりまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局のあり方が示され、薬剤師には、日頃から患者と継続的に関わることでいつでも気軽に相談できる“かかりつけ”として患者に寄り添うこと、薬局には、そのかかりつけ薬剤師が患者に対して継続して薬歴管理・服薬指導等を実践するための環境を整備することが求められました。
 一方、健康・医療・介護分野におけるICT化が進められており、国民や患者一人ひとりが自身の医療等のデータであるPHR(Personal Health Record)を有効に活用すること、健診・検診情報、レセプト・処方箋情報、電子カルテ情報、介護情報等のEHR(Electronic Health Record)を活用した医療・介護サービスを提供することが順次進められています。
 その中で薬局は、PHRやEHR等の新しい技術やツールを駆使して薬局内の業務を再構築する薬局DXを進め、患者に提供する薬物治療や医療・介護サービスの質を向上させること、そして、薬剤師の専門性から作り出された情報を医療・介護関係者に提供していくことが、薬剤師の価値・薬局の価値の向上につながると考えられます。
 本講演を、薬剤師と薬局が目指す方向性を考える一助にしていただければと思います。


【略歴】
・1995年に厚生省(当時)入省
・厚生労働省のほか、科学技術庁、国立医薬品食品衛生研究所、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国食品医薬品局(FDA)、富山県へ出向
・2020年8月に保険局 医療課 薬剤管理官に着任し、令和4年度調剤報酬改定・薬価改定を担当
・内閣府食品安全委員会事務局、消費者庁を経て、2025年7月より現職