講演情報

[LS10]血糖降下薬を今一度考えてみる

中村 昭伸 (北海道大学病院 糖尿病・内分泌内科 准教授)
糖尿病治療の目標は、糖尿病合併症の発症、進展を阻止し、糖尿病のない人と変わらない寿命と日常生活の質を実現することである。そのためには、血糖を含めた適切な代謝管理が重要であることは言うまでもない。糖尿病診療ガイドライン2024においても、血糖マネジメントを行うためには、食事療法、運動療法が推奨され、自己管理教育と治療支援が有効であると明記されている。
 薬物治療においても、現在さまざまな血糖降下薬が処方することができ、個々の病態に基づいた治療が可能になりつつある。その一方で、目の前の糖尿病のある方に対し、多くの血糖降下薬からどの薬剤を選択すると安全かつ効果的に治療できるのか、という疑問に直面する場合もある。
 また一般に薬物治療では、血糖マネジメントが不十分であれば、血糖降下薬が増え、種類が多くなる。それにより糖尿病のある方の心理的・経済的負担が大きくなり、治療満足度に影響を与える可能性も考えられる。さらには高齢者糖尿病を診療する機会が増えるにあたり、併存疾患治療も含めたポリファーマシーが問題点として浮かび上がる。
 以上をふまえ、本セミナーでは糖尿病の薬物治療を今一度まとめた上で、特に近年処方される機会が多いインクレチン関連薬やSGLT2阻害薬を中心に、われわれの基礎研究、臨床研究を提示しつつ、効果的な使用法を提案してみたい。さらには、薬物治療における「治療満足度」に着目したわれわれの臨床研究を紹介した上で、どのような治療の選択が治療満足度を上げるのかについても考えていきたい。


<学歴>
2001年 横浜市立大学医学部卒業
2009年 横浜市立大学附属病院 内分泌・糖尿病内科 助教
2018年 北海道大学 内科Ⅱ 診療講師
2024年 北海道大学病院 ダイアベティスマネジメントセンター 部長
2025年 北海道大学病院 糖尿病・内分泌内科 診療科長

<所属学会>
日本内科学会:評議員、指導医、総合内科専門医、認定内科医
日本糖尿病学会:理事、評議員、研修指導医、専門医
日本肥満学会:肥満症指導医、専門医
札幌糖尿病療養指導士認定機構:理事長