講演情報
[O-5-02]保険薬剤師のトレーシングレポート送付経験にかんする因子の検討:横断研究
○中本 健太, 松井 優子, 松木 史, 田中 佑樹, 真子 楓 ((株)なの花西日本)
【目的】外来がん化学療法施行患者の有害事象を防ぐために,多職種での情報共有が重要である.本研究の目的は外来がん化学療法施行患者(以下,化学療法患者)のトレーシングレポート(以下,TR)送付の実態とTRフォーマット・業務フローの有無を明らかにし,TR送付に関連する因子を明らかにすることである.【方法】2025年1月16日~2月13日に,保険薬局店舗に勤務する薬剤師を対象に質問紙調査を実施した.主要評価項目は過去1か月間の化学療法患者のTR送付経験,副次評価項目は所属店舗における抗がん剤TRフォーマット・業務フローの存在とした.ロジスティック回帰分析を用いて,化学療法患者のTR送付経験に関連する因子を検討した.【結果】調査対象薬剤師322人のうち39.1%が解析対象となった.解析対象者背景は男性26.2%,薬局勤務年数中央値7年[四分位範囲3-17],病院勤務経験ありは17.5%であった.過去1か月間の化学療法患者のTR送付経験ありは13.5%,所属店舗における抗がん剤TRフォーマット・業務フローの存在ありはそれぞれ7.9%, 6.3%であった.ロジスティック回帰分析の結果,抗がん剤TRフォーマットの存在(オッズ比5.87, 95%信頼区間1.3-26.7,p=0.022)・所属店舗における外来がん治療認定・専門薬剤師の在籍(オッズ比4.06, 95%信頼区間1.3-12.8, p=0.017)・時間的余裕(オッズ比3.36, 95%信頼区間1.1-10.3, p=0.035)と化学療法患者のTR送付経験に有意な関連が認められた.【考察】抗がん剤TRフォーマットの存在がTR送付経験と有意に関連し,送付可能性を約6倍高めることが示された.しかしながら,抗がん剤TRフォーマット・業務フロー整備率は10%未満と低く,過去1か月のTR送付経験も13.5%に留まっている.標準化されたTRフォーマットの普及と外来がん治療認定・専門薬剤師の育成,それらを活用するための教育・支援体制の構築が,医薬連携による外来がん治療の質向上に有用である可能性がある。
