講演情報

[O-6-14]複数の保険薬局における新しい指標「DASC」を用いた抗菌薬適正使用の評価

長谷川 洸介1,2, 瀬山 翔史2, 松村 有里子1, 中南 秀将2 (1.(株)メディックス, 2.東京薬科大学 薬学部 臨床微生物学教室)
【目的】効果的な抗菌薬適正使用を推進するためには、地域における抗菌薬使用状況を把握する必要がある。抗菌薬適正使用の評価には、DOT (Days of Therapy) やDPY (DDDs/100 prescriptions/year) などの指標が用いられている。近年、抗菌スペクトルを定量化し、客観的かつ定量的に評価できるDASC (Days of antibiotic spectrum coverage) が報告された。昨年の本学会において、我々は保険薬局として初めてとなる単一施設のDASCデータを報告した。今回は、複数薬局の処方データを用いてDASC/DOT (1処方あたりに投与された抗菌スペクトルの総量) を算出し、保険薬局の抗菌薬適正使用を評価した。
【方法】2017年1月1日~2024年12月31日までの期間で、当社八王子エリアの保険薬局10店舗で調剤した抗菌薬の処方データを対象に、DASC、DOTを集計し、DASC/100 prescriptions、DOT/100 prescriptions及びDASC/DOTを算出した。また、力価総量を基にDPYを算出し、抗菌薬適正使用の評価は、各指標間の相関を解析した。
【結果】DASC/100 prescriptionsは、2017~2020年と2021~2024年で20.6%減少したが、有意差は認められなかった (P=0.07)。DOT/100 prescriptionsは18.7%減少したが、同様に有意差はなかった(P=0.10)。一方で、DASC/DOTはDASC/100 prescriptions (r=0.85) やDPY (r=0.85) など複数指標と強い正の相関を示した。
【考察】本研究より、DASC/DOTが複数の指標と強い正の相関を示したことから、対象地域において広域抗菌薬の処方や投与日数、力価総量も相対的に多い傾向であった。DASC/DOTは広域または狭域抗菌薬使用の偏りを評価することができるため、地域における抗菌薬適正使用評価の新しい指標として有用であることが強く示唆された。今後、保険薬局において、DASC/DOTは、DOTやDPYを組み合わせて抗菌薬適正使用を評価することで、抗菌薬適正使用支援の取り組みに広く活用されることを期待する。