講演情報

[O-6-25]薬剤師による定期的な在宅訪問が信頼関係を築き、精神疾患を抱える独居高齢者の服薬アドヒアランスと症状改善に寄与した事例

久米田 みどり (ファーマみらい(株) 共創未来桶川薬局)
【目的】認知症やうつ病などの精神疾患を抱える独居高齢者は増加している。特に薬剤管理が不十分なケースが多くみられ、服薬アドヒアランスの低下が症状悪化を招くリスクが高い。一方、薬局薬剤師が在宅訪問を行い、患者と信頼関係を構築しつつ定期的な服薬指導を行うことで、アドヒアランス向上や症状改善が期待できると考えられるため、症例を通じて明らかにする。
【方法】患者はCDR1、日常生活自立度2b、独居の80代女性である。高血圧、骨粗鬆症予防、うつ病で通院中、幻視や妄想の症状がある。クロチアゼパムの頻回服用、パロキセチンの未服用、大量の残薬の問題を抱えている。週1回の在宅訪問、服薬カレンダーへのセット、残薬確認、薬効説明による介入を行った。
【結果】当初デイサービスでの他の利用者とのトラブルや、金銭面の不安から介入拒否など問題がみられたが、家族と連携し、金銭面の調整を行い、週1回の在宅訪問を開始した。介入により飲み忘れの減少、センノシドの適正使用、パロキセチンの発見と服用開始、幻視・不安による血圧上昇の改善、クロチアゼパム頓用回数減少、デイサービス適応向上がみられ、患者からは在宅訪問への感謝の言葉があった。
【考察】本研究では、精神疾患を持つ独居高齢者に対する薬剤師の在宅訪問介入が、信頼関係の構築を通じて服薬アドヒアランス向上および症状改善に寄与することを示した。特に、本症例では薬剤師が定期訪問し、ヘルパーや訪問看護師では確認が難しかった未服薬のパロキセチンを発見した。クロチアゼパムに依存した患者にパロキセチン継続服用の重要性の指導、適切な服薬支援を行った結果、症状の改善がみられた。ヘルパーや訪問看護師が薬の管理を行うことは当該職種の業務時間に負担をかけるだけでなく、不適切な服薬につながる可能性も高い。本症例を通じ、在宅訪問が必要な患者選定のための指標確立や、薬剤師の支援体制の在り方が今後の課題として示唆された。