講演情報

[P-005-B]慢性心不全患者への薬剤師からのフォローアップと服薬管理について

尾形 初恵 ((株)アイセイ薬局 アイセイ薬局 白井店)
【目的】 心不全は多くの心疾患の終末像であり、近年、心不全患者の数は虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)や高齢化に伴う高血圧や弁膜症の増加により急増している。薬剤の適正使用に関する医師との情報共有(薬剤の変更又は減量の提案など)や服薬・生活指導を通じて再入院リスクの軽減、QOL向上に寄与した事例を報告する。
【事例の概要】 患者はX年8月時点で、COPD、腎機能低下、脊椎圧迫骨折の既往があり、体重40kg以下の痩せ型・フレイル・サルコペニア状態であった60代女性。X+3年10月急性心不全により入院、その後慢性心不全に移行した。入院時の服用薬剤数8種(内服7種+吸入薬)から退院直後19種へ11種増加。追加薬剤の効果が処方意図に沿うものか把握が困難な状況であった。 フォローアップにより、脈拍低下(40以下)や吸入薬の使用困難を早期に把握し、医師へトレーシングレポートを提出のうえ減薬提案や吸入デバイス変更を提案。結果、メインテート®の減量、酸化Mg、アミティーザ®、アルファロール®、ラシックス®の4種減薬及び吸入デバイスの変更(エリプタ→ブリーズヘラー)につながった。現在は減薬状態を継続し、15種服用。服薬アドヒアランスは良好で、再入院には至っていない。さらに、栄養・運動指導も実施し、栄養状態の改善も認められた。
【考察】 心不全患者は、食事や日常生活において多くの制限を受けることが多く、特に高齢者では薬剤管理の困難さや食事療法に関する知識の不足が課題となる。本事例では、薬剤師が積極的に介入し、服薬状況や生活環境を継続的に把握・管理することで、再入院の予防、服薬アドヒアランスの向上、患者の理解促進およびQOLの改善に寄与できたと考えられる。処方医へのフィードバックを通じた情報共有は、薬剤師の重要な役割であり、今後も多職種連携の中でその役割をさらに発揮していくことが期待される。