講演情報

[P-011-B]甲状腺を全摘出した患者の服薬コンプライアンス改善を目指し服薬支援した症例

田中 利樹, 小坂 智子 ((株)アイセイ薬局 稲毛海岸店)
【目的】甲状腺を全摘出した患者の服薬コンプライアンス(以下CP)改善のため服薬支援を行った症例を報告する。
【事例】対象は、X-9年に甲状腺の全摘術を受け、以降、甲状腺ホルモン製剤とカルシウム製剤が継続されている70歳代女性。独居で家族の支援が乏しく、過去に医師から厳しく指摘された経験から、服薬状況についてCP不良の状況を正確に申告できずにいた。医師はCP良好と判断したうえで薬物治療を行っており、血中Caと甲状腺ホルモンのコントロールが困難な状態から処方薬の用量変更が繰り返し行われていた。
X年、薬剤師が多量の残薬があることを聞き取り、残薬整理を契機に服薬支援を開始。患者は甲状腺摘出による自覚症状が少ないうえ、病識に乏しく、食事が不規則であり「食後薬は食事を摂らない時は不要」と誤認していた。
薬剤師は週4回程度、電話で服薬状況を確認し医師へ報告。介入前はチラーヂン®錠の用量が段階的に150μg/日まで増量されていたが、介入後は87.5μg/日へ減量となり、その状態が7カ月間維持できた。また、電話による服薬支援開始前3カ月間の服薬忘れは約50%であったが、支援中は約20%に改善された。CP改善を受け、アラーム設置による自己管理に移行したが、2カ月後には服薬忘れが再び約50%に増加した。介護申請を推奨したが、患者および家族の反応は消極的であった。
【考察】処方は適正な服薬をしていることが前提であるが、本事例では患者の回答により実態が把握されず、用量調整が困難となっていた。今回のように継続的なフォローと医師との連携は用量の適正化に有効である。また、薬剤師が患者へ電話をするといった直接的なアクションを伴う対策はCP改善に効果がある一方、アラームセットのみといった患者自身で完結する対策では継続的なCP改善には繋がらない可能性が考えられた。そのため、恒常的な支援体制の構築が今後の課題である。