講演情報

[P-017-B]高齢者のADLに合わせた医薬品の薬剤特性を活用した一例

北代 玲子1, 片平 智大2, 林 千尋1, 原 和夫3 (1.わかば薬局大津店, 2.浜川崎薬局, 3.(株)わかば)
【症例】有料老人ホーム入居の90代女性。訪問診療にて内科薬2種、精神科薬4種類が処方され便秘傾向のため酸化マグネシウム細粒83%0.8g分2朝夕食後を服用していた。X年Y月1日、排便コントロールの悪化がみられアミティーザ®Cp24μg2Cp分2朝夕食後が追加処方された。同月22日、施設看護師より「相変わらず排便状態が悪く、週に1回摘便し苦労している」、「嚥下状態も悪化しており、処方薬はできるだけ粉砕してほしい」と相談を受けた。ゼリー状であれば嚥下可能と介護者に確認し、本薬剤を服薬ゼリーの代わりに使用できないか施設看護師と検討した。訪問医に対しラグノス®NF経口ゼリー2包分2朝夕食後への変更を提案し、予定されていたチラーヂンS®錠は粉砕せず経過観察とした。Y+1月19日施設訪問時には、便秘状態がやや改善し、チラーヂンS®錠の服用も問題なかったが、大きな錠剤の嚥下が困難であることを確認した。同月25日、訪問医に増量を提案し3包分3毎食後服用となった。精神科処方薬は全て粉砕に変更された。Y+2月3日「自発排便があるため、摘便が不要となった」と報告を受けた。その後患者ご逝去となり、介入を終了した。
【考察】本症例は、嚥下状態に応じて薬剤師が薬剤の特性を踏まえ処方提案を行った事例である。製剤の特徴、安定性や薬物動態を考慮しラグノス®NF経口ゼリーを選択した。一般的な服薬ゼリーは、子供用1包18g、成人用25gがあり、本製剤は12gと少量である。しかし当該患者は内服する錠剤が朝1錠、夕4錠であったため共に服用することは可能ではないかと判断し医師に提案のうえ実施した。本介入により、週1回の摘便が不要となり患者本人の苦痛や介護者の負担も軽減された。こうした剤形変更を伴う処方提案は薬剤師ならではの介入であり、個々の患者に応じた剤形や服用方法の提案は、患者のQOL向上のみならず、介護者の負担軽減にも寄与することが示唆された。