講演情報

[P-018-C]トレーシングレポートを活用した情報提供の現状分析と今後の推進策

高橋 愛1, 齋藤 涼1, 益子 有斗2, 深井 早紀3 (1.ウエルシア薬局(株) ウエルシア薬局 富津大貫店, 2.春日部緑町店, 3.人事本部 薬剤師登販教育部)
【目的】トレーシングレポート(以下TR)は、薬局と医療機関等が連携して患者の健康管理を行うための重要なツールであるが、作成への抵抗感や運用の難しさが課題となっている。本研究では、薬剤師が情報提供の必要性を感じる内容と、実際の記載内容との乖離や、作成を妨げる要因を明らかにし、作成率向上に向けた具体的な推進策を検討する。
【方法】ウエルシア薬局千葉市原営業部内の薬剤師150名を対象に、Webアンケート調査を実施した(2025年4月24日~5月23日)。主な調査項目はTR作成頻度と満足度、情報提供が必要だと考える内容(必要性)と実際に情報提供できている内容(実施状況)、作成時の障壁とした。必要性と実施状況の一致割合(実施率)を算出し、EZRでMcNemar検定を行った。
【結果】有効回答は110名(回収率73.3%)であった。TRの作成頻度は「平均して1週間に0回ではないが1回未満である」が62名(56.4%)と最も多く、頻度への満足度は「満足していない」が73名(66.4%)であった。実施率は「リフィル処方箋対応」(79.0%, p<0.05)や「服薬状況」(75.0%, p<0.05)で70%を超える一方、「ケアマネージャーに向けた情報提供」(25.0%, p<0.05)や「肝・腎機能」(23.3 %, p<0.05)では約25%に留まった 。作成時の障壁は、「勤務時間内に記載する時間がない」が61名(55.5%)、「時間も手間もかかり面倒である」が57名(51.8%)となった。
【考察】TRのうち、ケアマネージャーへの情報提供や肝・腎機能は、代理者からの聞き取りや検査値が把握できないなどの情報収集そのものが困難であり、情報が揃っていたとしても、報告の要否に迷う項目も多く、作成の滞りに繋がっていると考えられる。今後は、情報収集支援や記載基準の明確化など、実務と意識の両面からの支援が必要だと考える。