講演情報

[P-026-B]腹膜透析導入後対照的な経過を辿った2症例

藤川 佳洋子 (日本調剤(株)中の島薬局)
【背景】腹膜透析(PD)を最初の透析選択肢とした「PDファースト」は心血管リスクや死亡率、腎移植など予後に重要な影響を与えるとされるが、97%の患者が血液透析(HD)を最初に導入している。当薬局において2名の患者が希少と言えるPDを開始したが、これらの患者は対照的な治療の経過を辿ったためその症例について報告する。
【方法】20XX年Y月~20XX+3年Y月までの期間にPDを導入した患者2名の処方内容、検査値、治療経過、PD継続期間、合併症、社会的決定要因(就業、生活環境、家庭環境など)を対象とした追跡調査を実施。
【症例】
◎症例1
80歳代、男性、腎臓がん。術後腎機能低下し20XX+2年Y月~PD導入。5ヶ月後仕事復帰し現在もPD継続中。
背景:調理師。食事療法は自己管理にてコントロール良好。仕事の継続が目標。独居だが息子は近隣に在住。処方薬は14剤以上あるがヒート自己管理を希望しコンプライアンス良好。PD導入後に一包化へ変更したが変わらず管理良好。
◎症例2
40歳代、男性、糖尿病、不整脈、結節性痒疹。糖尿病性腎症の進行により20XX年腎移植を希望したが禁煙できず中止。20XX+2年Y月PD導入するが、めまい、疲労感強く9ヶ月後中断。心カテ、虚血性心疾患の処置を経て3ヶ月後HDへ移行、週3回継続中。
背景:建築業。勤務時間、食事が不規則。喫煙15本/日。処方薬は全て夕食後1回にまとめて一包化し自己管理中。栄養指導の効果なく、嗜好を変えることができずコンビニ利用や外食が多い。HD移行後もフルタイム就業叶わず。
【考察】PD継続のためには治療意識の高さや理解度、食事を含む生活環境、仕事へのモチベーション、合併症などが関与していた。PD導入患者には服薬管理だけでなくこれらの背景にも気を配り、PD導入意義や継続の必要性、またそのための準備について啓蒙していくことで残腎機能を維持し、患者が求める生活に繋がると考える。
【引用文献】PMID:35570995、38445493、40234047