講演情報

[P-042-C]デバイスの販売中止に伴いPCSK9阻害薬が変更となった患者に介入することでアドヒアランス向上につながった事例

落合 広明1, 上田 哲也2 (1.(株)Human リリーフ薬局 知立店, 2.(株)Human)
【背景】PCSK9阻害薬は、主に家族性コレステロール血症(FH)、冠動脈疾患などの心疾患イベントの発現リスクの高い高コレステロール血症に対して有効な治療薬の一つである。本邦では、ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体薬であるエボロクマブ(レパーサ®)と非常に長い作用時間を特徴とする低分子干渉リボ核酸(siRNA)治療薬であるインクリシラン(レクビオ®)が保険収載されている。今回、PCSK9阻害薬の切り替えが行われた患者に薬局薬剤師として介入したことでアドヒアランス向上につながった事例について報告する。
【症例】40歳代男性。FH、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、うつ病にて加療中の患者。X-2年1月、FHに対して在宅自己注射が可能なレパーサ®皮下注420mgオートミニドーザーが導入される。X年5月、4週間に1回投与のデバイス(オートミニドーザー)の販売中止に伴いレパーサ®からレクビオ®へと変更となった。X年8月、レクビオ®投与2回目。持参された血液検査の結果を確認し、患者本人に使用感などの聞き取りを行った。投与間隔の延長や看護師による投与については好印象であったが、LDL-C値は変更前より増悪していた。自己負担金額や薬剤の効果に対して強い不安がみられたため、薬剤の違いや継続治療の重要性について説明しフォローアップを行った。X年9月、ロスバスタチンが追加されLDL-C値は改善傾向となる。その後は不安な様子も無く継続治療に至った。
【考察】レパーサ®とレクビオ®の有効性および安全性については直接比較した大規模臨床試験はなく、単純に比較することはできない。今回の症例はレクビオ®への切り替えにより、アドヒアランス低下がみられた患者に薬局薬剤師として介入することで不安を軽減することができ、継続治療に至った一例である。PCSK9阻害薬は高額な薬剤でもあり、治療を必要とする患者のアドヒアランス向上のためには、薬局薬剤師としても積極的な介入が重要であると考えられる。